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哲学思考(欠落思想) ◆aOl4/e3TgA 放送の声が変わったな。 それが、球磨川禊の抱いた最初の感情であった。 最初の放送でも声の主は不知火袴ではなく、名前も知らないような老人の声だったが、今度は女の子の声だった。 殺し合いの主催役の片棒を担いでいることを分かっているのか。 そんなお節介じみた疑問を一瞬抱いたが、それ以上は考えない。 何故なら、どうでもいいことだからだ。 死者を淡々と読み上げた少女と、その前の放送で同じく死者を読み上げた老人と、更にまだ居るやもしれぬ共犯者。 彼らがいったい何を考えているのか。 彼らがいったい何を求めているのか。 彼らがいったい何を知っているのか。 彼らがいったい何を握っているのか。 彼らがいったい――何を、目指すのか。 さぞ希望に溢れたことだと思う。 だからこそそれは、球磨川禊というマイナスにはどうでもいい。 殺し合いを主催するような連中のことだ。 週間少年ジャンプなら決してロクな目に会えないまま、正義のヒーローに格好良くぶちのめされるような悪党。 そんな連中なら、甘くて温い友情を築いていることだろう。 チョコレートのように甘くて、蜂蜜のようにドロドロで、粉砂糖のように吹いたら散ってしまうほど軽い軽い友情を。 ――それでもだ。 それでも彼らは幸運だと、球磨川は思う。 彼らの向かう先にあるのは紛れもない勝利だ。 いや、正しくは《ある筈》のものと云うのが正しいだろうか。 しかしだ。 しかしながら、そういった勝利が約束されない者もこの世には在る。 ぬるい友情を築いて。 無駄な努力を積み重ねて。 そうしてむなしい勝利にたどり着く。 それが球磨川禊をはじめとする生まれながらの負け組――《過負荷》と呼ばれる存在である。 ――その彼は。 放送にて告げられた一つの名前を反復していた。 『人吉……善吉?』 その名前が呼ばれることは、今もどこかで変わらず正義を貫いているだろう生徒会長に比べれば当然とさえいえたことだ。 彼は《異常》でもなければ《過負荷》でもない、《普通》の少年。 まあ、黒神めだかという一つの生ける伝説にずっと連れ添っている事実は異常と言う他ないだろうが、彼の存在そのものはごく普通だ。 ホームズとワトソンの関係で言うなら、間違いなくワトソン。 どんなに大きな活躍をしてみせたところで、結局は黒神めだかというホームズに見せ場を奪われる、それだけの存在。 球磨川禊にとっては、黒神めだかほどに特別な意味を持ちはしない。 《そういえばあの子は元気かな》ってくらいの認識をされるのがせいぜいの、記憶には残っても脅威にはならない、そんな記号。 『――おいおい』 なのに球磨川は苦笑する。 彼が死んでしまった事実に苦笑する。 現実から逃げる気はないが、とにかく苦笑する。 彼が接触し、ちょっかいをかけた相手の死に、苦い笑いをこぼす。 『おいおいおいおいおいおいおいおい!』 それはやがて明確な笑いへと変わっていった。 球磨川はマイナスであるが、卑屈になりすぎて自分を追い込むようなタイプとはまた違うマイナス性を持ち合わせている。 負け組どものヒーローとしての、同族を引きつけるカリスマ性。 或いは、勝っているのにいつもどうしてか負けてしまう――敗北の星のもとに生まれてしまったがゆえの、《敗北者性》。 自らを負け組と誰より理解しているからこそ落ち込まない。 そのメンタルはまさしく要塞。 彼には敗北は水だ。 彼を敗北させればそれは魚に水をやるのと同じこと。 彼の心を真に動かすのは、彼の仲間に何かがあった場合。 球磨川は異常なほど仲間想いという側面を持っている。 これが球磨川禊という最底辺の敗北者へ与えられた唯一のプラスなのかは定かではないが、とにかく彼にも弱さはある。 ――いや、弱さなんて曖昧な言葉を用いると彼自身が弱さが服を着て歩いているようなモノなので、とんだ誤解を生みかねないが。 彼にとって人吉善吉は仲間ではない。 阿久根高貴とは違い、彼が仲間であったことは過去にはない。 だからその死はまさしく無価値。 《隣の家に住んでたおじさんが体を壊して死んじゃった》くらいのどうでもいいことである――のだが。 『なんだよ善吉ちゃん――きみ、死んじゃったのかい』 素直に球磨川は驚きを覚えた。 善吉がこんなところで死んでしまったことに驚愕した。 驚愕して、反芻して、やがて笑いがこみ上げてきた。 それは敗者を踏みにじる質の悪い笑顔とはどこか異なり。 だけど決して、旧知の知人を失ったことに傷つきながらも、無理に笑って前を向こうとしている――そんな健気なものではない。 なんとも形容し難い笑いだった。 彼自身、何が可笑しくて笑っているのか分からない。 ゆえに誰にも分からない。 球磨川禊がどうして笑うのか、分かる者は此処にはいない。 『そうだなあ。これってさ、ポケモンで例えるとサトシ君がピカチュウに逃げられた――みたいなもんだよね! そっかそっか、善吉ちゃん!』 それはどれほど滑稽なことだろうか。 誰とでも分け隔てなく接する主人公が、窮地に立たされているまっただ中に相棒と呼んでも差し障りのない存在を失う。 少年漫画だったら、それだけで鬱ルート真っ逆様の大事件だ。 きっと格好良くラスボスを倒した後にでも《わけのわからないパワー》なんかで都合よく復活されるのが読めてるけど熱い展開でもある。 ――だが、これは少年漫画じゃない。 都合のいいところで味方は助けに来ない。 都合よく悪役は主人公の口上が終わるのを待っちゃくれない。 そして、死人は生き返らない。 『きみは――《好きな女の子を一人残して》死んじゃったのかい!』 黒神めだかを人吉善吉が愛していたのはむろん知っている。 めだかもその好意に鈍感な訳じゃなく、むしろ自覚した上で彼を側に置いているようだった。 彼女は悲しむだろう。 中学時代に、副会長の顔面を剥がした時のように暴れるだろう。 いいや、あれの比ではないかもしれない。 何しろ、十数年を共に過ごした存在をあっさりと失ったのだ。 彼女を乱心もとい乱神させるには、十二分に事足りる話である。 『そいつはマイナス的に見てもマイナスだぜ。どうもきみは、恋愛漫画の主人公には向いてなかったようだね』 女の子を傷つける意図は善吉にはなかっただろう。 当人はむしろ、誰かを助けて満ち足りて死んでいったのかもしれない。 ああ、そいつはありそうだと球磨川は思う。 彼もまた、正義感が熱い男だったのをよく覚えていた。 『さぁて』 球磨川禊は、側で眠る同行者・鑢七実をちらりと見やる。 彼女は強い、それこそ黒神めだかにも引けを取らないくらいに強い。 おまけに過負荷だ。バリバリの危険思想家、というかそれ以前にそもそも彼女は殺し合いに乗っている。 傷心のめだかとも、いずれ行き遭うかもしれない。 そうなれば、果たしてあの主人公少女は勝てるのか? 七実を破っても自分がいる。 自分がいるなんて言っても、どんなに弱っていたって彼女に勝てるだなんて夢を描けるほど球磨川は理想家ではない。 めだかは勝つだろう。 ひょっとすると七実を破った上で、その上で何の苦もなく自分を蹴散らして、二人の過負荷を見事に無力化してのけるだろう。 ――そう。 黒神めだかは必ず勝つ。 『善吉ちゃん、きみはたぶん立派だったんだろう。僕の知らないところでめだかちゃんを支えていたんだろうし、今回惜しくも殺されてしまったことだって、きみのことだから名誉の戦死だったんだろう。僕は信じるよ』 『だから』 『――きみのぶんまで、きみの無念も一心に背負って、だけどきみを誰が殺したのか分からないから――』 ――ただし。 『背負ったきみの無念を、たまたま通りかかっためだかちゃんにぶつけてやることにするぜ』 相手よりも圧倒的に深い傷を負いながら。 球磨川禊はなにも負けるために挑むのではない。 生まれついての負け組だからといって、それが一切の勝利欲を有していないかといえば、それは確実にノーである。 彼は証明したいのだ。 負け組でも。 嫌われ者でも。 幸福な連中に足蹴にされる雑魚敵でも。 それでも、幸せな連中に勝てるんだってことを証明したい。 それが球磨川禊の、願いらしい願い。 殺し合いを勝ち抜くなんて手間をかけなくたって、この会場にいる《彼女》と戦うだけで叶えられる願い。 『――――』 何かを思うように虚空を見上げる球磨川。 しかし、彼の物思いに耽る時間は数秒と許されなかった。 「どうやら――わたしは殺されてしまったようですね」 身体を地面に預けたままで、眠っていた筈の七実が言葉を発した。 もう少し眠っているものだと思っていたので、声がかかったことに少しだけ球磨川は驚く様子を示した。 当たり前だが、彼女に傷なんてものはない。 死んだ事実を《なかったこと》にされた彼女は、一度腹を捌かれたなんて嘘のように、そこに存在している。 『ああ、お節介かもしれないけど僕の過負荷を使ったよ』 「そうですか、ありがとうございます」 七実はつとめて冷静に礼を言うと、本来痛ましい傷口がある筈の、真心に切り裂かれた場所をそっと右手でさする。 当然だが、傷なんてない。 「油断しました」 『気にすることじゃないよ、僕も仇討ちにかかったら秒殺されたし』 七実の強さは、これまで同行してきた球磨川もよく知っている。 だから彼女が敗北したのは彼にとっても驚くに値する出来事だった。 不本意な形とはいえ休憩を取ったことで、彼女の内部に蓄積していた疲労も少しは和らいだようだし、結果オーライかもしれない。 殺し合いは加速している。 たとえばこうして七実と言葉を交わしているその間にも、誰かが放送を聞いて泣いたり怒ったり決意を新たにしたりしている筈だ。 そしてまた六時間の後に――変わらず放送はやってくる。 「では、そろそろ進みましょうか。不覚を取りましたが、くすぶっていても仕方がありませんし」 『そうだね、行こう。あの橙ちゃんもどっか行ったみたいだしね』 橙、というワードに七実が一瞬反応した。 やはり彼女の戦闘能力は、七実からしても相当なものだったのだ。 油断したと言った彼女のそれは、言い訳などではなく真実だろう。 最初から強大な存在を殲滅する為に、全力までいかずとも注意を払って臨んでいれば、待つのは必ずしも敗北ではなかったかもしれない。 『それに、僕にもやることが出来たしね』 球磨川はぽつりと呟いた。 七実に言ったのではなく、それは自分自身へと発した台詞。 マイナス十三組を結成しての理事長抹殺、ここに違いはない。 ただその前に、ひとつイベントを挟むだけのことである。 黒神めだか――彼女へと善吉の無念をぶつける。 人吉善吉の死を知ってから、どうしてかそうしなければならないと思い始めるようになった。 どういう心境の変化かは彼にも分からない。 ただ一つ言えるのは。 「簡単には負けてやれないよ」 今回は、負けることを前提としない。 負け犬として勝利することを目指す。 そして証明するのだ。 負け犬でも主役を張れることを。 「禊さん、なにかおっしゃいましたか?」 『ん? いいや、なんにも』 「そうですか。気のせいか、初めて禊さんの《気取っていない》台詞を聞いたような気がしたのですが」 『間違いなく気のせいだね』 気取らない――括弧つけない。 球磨川禊のバトルロワイアルは続く。 彼を待ち受けるのは、果たしてはじめての勝利かお約束の敗北か―― 【一日目/真昼/G-6 薬局付近】 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(中) [装備]無し [道具]支給品一式×2、錠開け専門鉄具、ランダム支給品(2~6) [思考] 基本:弟である鑢七花を探す。 1:七花以外は、殺しておく。 2:骨董アパートに行ってみようかしら。 3:球磨川さんといるのも悪くないですね。 4:少しいっきーさんに興味が湧いてきた。 [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。 ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ。お腹は満腹で、疲れは結構和らいだね』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 『基本は疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番はやっぱメンバー集めだよね』 『2番は七実ちゃんについていこう! 彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』 『3番はこのまま骨董アパートに向かおうか』 『4番は――――まぁ彼についてかな』 『5番は善吉ちゃんの無念をめだかちゃんにぶつけてあげよう』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り1回。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り2回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用不可。残り45分) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします。 ※戯言遣いとの会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。 解放された者と抑える者 時系列順 友情の手前、憎しみの途中 解放された者と抑える者 投下順 友情の手前、憎しみの途中 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 球磨川禊 トリガーハッピー・ブレードランナー 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 鑢七実 トリガーハッピー・ブレードランナー
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友情の手前、憎しみの途中 ◆ARe2lZhvho ◆ 「――いーちゃん」 ◆ ふむ。 阿良々木の妹も死んだか。 こんな殺し合いの場でなくとも二度と会いたくなかったのでもう遭う可能性が潰えたのはありがたい話だ。 それだけ。 それだけのこと。 禁止エリアのうち二ヶ所はここから遠く離れたエリアの端なのはいいとして、残る一ヶ所が玖渚のいる場所になったのが問題だが。 しかし、禁止エリアとなる時間まで三時間、俺以外にも協力者はいるようだしどうにかなるだろう。 どうにかするだろうし、なんとかなるだろう。 例え、取り返しのつかないことが起こっていたとしても。 もし、そのような結果が起きたとしたら、潔く諦めよう。 いつまでも固執していてはみすみす他の可能性を見過ごしてしまいかねん。 さて、放送も終わったことだしもうここにいる理由がない。 いい年した大人が一人でアトラクションに乗ったところで誰に得があるのか。 華がなさ過ぎる。 淋しいだけだ。 しかしその前にやっておきたいことがある。 江迎と真庭二人から回収した支給品。 それに自分本来の支給品。 たまたまナイフがあったからあの危ない少女から逃げ切ることができたが、もしもあのとき持っていなかったら抵抗する手段すらなかったかもしれない。 せめてもの足掻きが許されるくらいの装備は欲しいところだ。 だからこその取捨選択。 現時点でのデイパックの数は四つ。 一人で持つには明らかに多い。 いくら背負えるとは言え二つでも多いくらいだ。 だがもちろんその対策は考慮済み。 デイパックの中にデイパックが入るのは江迎から回収したところで確認している。 容量に限界はないようだし、ここで大まかに二つに分ける。 一つは武器などのすぐに出せるような重要度が比較的高いもの。 もう一つは食料などのすぐに出す必要がない重要度が比較的低いもの。 それぞれを一つのデイパックにまとめたら今度は重要度が低いものを高い方へ入れる。 これでかなりコンパクトになるはずた。 その肝心の支給品だが。 柄と鍔しかない刀。 日本刀。 狼牙棒。 金槌。 拳銃。 メイド服。 そしてスマートフォン。 内訳は俺が柄と鍔しかない刀。 江迎が日本刀と狼牙棒。 真庭狂犬が金槌と拳銃。 真庭喰鮫がメイド服とスマートフォン。 俺のは誠刀・銓と言って相手を斬る刀ではなく、自分を切る刀、自分を試す刀などと説明書には書かれているが刃もない刀で何を切れというのか。 これは外れだな。 江迎の日本刀。 刃長四尺反り一寸足らず。 刃文は細い直刃。 刀身には虎の彫り物。 富岳三十六刀工の一人、壬生傘麿の初期作品とあるが聞いたことがない。 まあそんなことは関係なく使えるか使えないかで言えば使えるものだ。 当たりの方のデイパックに入れる。 続いて狼牙棒。 重くて簡単に振り回せるものではない。 外れだ。 金槌。 鈍器として役に立つがいかんせん他に使い勝手の良いものがある。 外れでいいだろう。 拳銃。 デザートイーグルか。 間違いなく当たりだな。 撃ち方さえ気をつければ反動も少なくすんだはず。 予備弾は40発か、まあまあだ。 予備弾は当たりのデイパックに入れてデザートイーグルは装備する。 メイド服。 外れ。 スマートフォン。 スマートフォン、か。 操作する。 データは入っていないようだ。 玖渚は『掲示板みたいな物は作って置いたから、他の参加者とそれを使って情報交換をすると良い』と最初に言っていた。 そんなものを作っておいてまさか携帯やスマホから繋げられないはずがないだろう。 操作する。 繋がった。 書き込みがあるのは探し人・待ち合わせと目撃情報だけか。 顔面刺青というのは零崎人識で間違いないとして、妹がいるだと? 会場にいた零崎は全部で四人。 一緒に行動しているとあるので一回目の放送で呼ばれた曲識は除外。 軋識だとすると先程呼ばれたのに玖渚の名前は呼ばれなかったことから考えると可能性は薄いだろう。 何か危機があって逃がすために身代わりになったというのも一応考えられるが。 となると双識か。 しかし、『識』という字が入っているのが気になるな。 零崎は男女関係なく全員に『識』がついているのだろうか? 零崎という名前が本名でない可能性は大いにある。 他の参加者がその妹である可能性も念頭に入れておいた方がいいだろう。 そして目撃情報の方は……これは十中八九戦場ヶ原だろうな。 阿良々木火憐、八九寺真宵、羽川翼が書くとは考えにくい。 だが、何かが引っかかる。 玖渚は黒神めだかの悪評を広げようとしていてそれに戦場ヶ原も乗った。 一見筋が通ってるように見えるがおかしい。 阿良々木を殺した相手に対し戦場ヶ原があんな穏便な書き込みで済ませるか? そもそも黒神が阿良々木を殺したというのが……ん? どうにも話が見えない。 少し整理してみよう。 江迎の話から察すると黒神は殺し合いに乗るような人物ではない 玖渚が黒神を危険視するのは『正しすぎる』から 戦場ヶ原の書き込みによると阿良々木暦は黒神に殺された 要点をまとめるとこうか。 なるほど、通りでおかしかったはずだ。 先二つと後一つで真逆の内容だったのだから。 これらの情報をできるだけ矛盾なく繋げてみる。 本来の黒神は殺し合いに乗るような人物ではないが何らかの理由で乗った 乗った黒神に阿良々木は殺された そして玖渚はおそらくそのことを知らない 戦場ヶ原の書き込みは他の参加者を黒神に近づけないため? 最後は当てずっぽうだが戦場ヶ原が阿良々木を殺した相手をみすみす放っておくとは思えないしな。 あのときミスドの店内で見た牙の抜けた戦場ヶ原のままだというなら話は別だが、そんな戦場ヶ原は見たくないな。 まあ、どちらだったところで俺のやることは変わらん。 誰かに会えば騙し手込めにするか無難にやり過ごすか。 用も済んだし出るとしよう。 ◆ ――――橙は、ただ駆ける。 ◆ 座標は変わって地図上ではF-5地点。 診療所から更に北寄りのとある場所にその二人はいた。 「なあ、玉藻ちゃん。今聞こえた声は『あいつ』のものだよな?」 「……みたいで、すねえ。ぎはらはせんぱ……ゆらぁり……いの声――」 「ええい、まどろっこしい。とっとと話せ」 「あうぅ」 デコピンが飛んだ。 零崎の少年と同じく人類最強も中々の短気ようである。 尤も、これを聞けば即座に双方とも否定するだろうが。 「ま、いいや」 そして話題の切り替え。 相手の都合を全く考えていないが、相手は狂戦士――西条玉藻。 人類最強の請負人――哀川潤でなくともそもそも考える必要は無い相手なのである。 「玉藻ちゃんさあ、なんか荷物多くね?その割には支給品すくねーし」 「そうですかあ?」 「というか明らかに多いぞ、食料とか水とか二人分あるじゃん。持ってるのナイフだけだし」 「玉藻ちゃんはあ……覚えてま……ゆらぁり……せんねえ」 「ふーん。ちっ、これ以上聞いても意味なさそうだ」 「舌打ちとか……しないでく…………ださいよう」 「だったら情報洗いざらい話せ」 「ひゃうぅ」 しっぺが飛ぶ。 その度に玉藻の呻き声が響くがどちらもおかまいなしのようだ。 特に哀川潤は楽しんでいる節もある。 「んで、このまま進むとランドセルランドっつー遊園地があるけど、どうする?」 「遊園地――ですかあ?」 「そ、遊園地」 「どうするって……言われましても、ねえ」 「おいおい、遊園地ですることっつったら一つだろ――遊ぶんだよ」 「………………いいんですかあ?」 「玉藻ちゃんまだ中学生なんだろ?こういうのは今のうちやっておかないと後悔するんだって」 「はあ」 「お、なんかあそこに人いるじゃん。ぼこって情報聞き出そうぜ」 「私が言うのもなんですけどお……潤さんも大概ですねえ……」 ◆ 「――あか」 ◆ さて。 厄介なことになった。 ランドセルランドを出た直後、やってきた二人組に捕まったわけだが、どちらもやりづらい。 最初に江迎と別れた直後に遭遇した危ない少女が見えた瞬間、逃げようとしたが隣にいた赤い女がそれをさせないオーラを放っていたからだ。 例えるなら――何でも知っているあの先輩を相手にするような。 危ない少女もなんだか毒々しい雰囲気が消え失せているし二人のどちらが立場が上かというのはなんとなくわかったから襲われることはないと踏んだのだが。 だが。 話のペースを全く掴ませてもらえない。 詐欺師としてこれは致命的だ。 これでは詐欺にかけようとすることすらできない。 ……仕方ない、情報を聞き出すことに専念しよう。 最悪、こちらが損さえしなければいいのだ。 「――あたしは日之影クンと銀閣っつー侍みたいな格好したのしか会ってねーんだわ。日之影クンもさっき呼ばれちったし」 日之影空洞に宇練銀閣か。 どちらも情報はないな。 「俺が今まで会ったのはそこの少女に江迎怒江、鑢七実くらいだな、名前までわかっているのは」 本当はまだいるが、ここは出し惜しみしよう。 残りを出すかどうかは向こうからの情報次第だ。 「名前わかんねーやつの外見とかそういうのわかんねーの?」 穏便に進んでいるように見えて実際は有無を言わせぬ気迫を出しているのだから恐ろしい。 ちなみに少女はさっきから地べたに座り込んでいる。 ナイフを持ったままなのが危なっかしいが害がないのなら放っておいてもいいだろう。 「顔面に刺青を施した男と至って平凡そうな男の二人だな」 「平凡そうな男?」 聞いた感じ危なそうな顔面刺青の零崎人識より外見だけは平凡そうな球磨川禊に反応するのか。 知り合いなのだろうか。 「学ランを着ていたからおそらく高校生だろうが知り合いなのか?」 「高校生?じゃあいーたんじゃねえな。今頃どこでほっつき歩いてるのかねえ」 いーたん……? 確か名簿には「い」で始まる名前はなかったはずだが。 無桐伊織はおそらく女だろうし。 カマをかけてみるか。 「その『いーたん』というのは『戯言遣い』のことか?」 「ん、そうだけど知ってんのか?」 「いや、ただの推測だ。 名簿では『い』から始まる名前はないし、無桐伊織は女だろうからな。 後は唯一名前らしい名前でなかった『戯言遣い』ではないかと思っただけだ」 「なるほどねー、確かに正解だよ。そういや伊織ちゃん下手すりゃ義手つけたばっかの可能性もあるのか」 哀川潤と無桐伊織、戯言遣いには繋がりがある、と。 無桐伊織と戯言遣いに繋がりはあるかどうかは不明のようだが。 持っている情報が多い分、こちらが少し話を持っていきやすくなったな。 少し踏み込んでみよう。 「顔面刺青の男には心当たりはないのか?」 「それ零崎人識くんだよ。こんな声してただろ、かはは」 声帯模写か。 見事な腕前だな。 確かに聞いた声と寸分違わない。 感想を表に出すことはしないが。 「なるほど、そういえばそんな声をしていたような気もする。知り合い――以上の関係のようだな」 「まあ、こないだ伊織ちゃん共々仕事を手伝ってもらったりしたしな」 『伊織ちゃん共々仕事を手伝ってもらったりした』か―― まさか、な。 「零崎人識と無桐伊織は兄妹だったりするのか?」 あの気まぐれの権化のような男が赤の他人といるというのは考えにくい。 『識』と『織』は漢字も似ているしな。 これはこじつけだが。 「そ、あんた結構詳しいな。本当にそんだけしか会ってないの?」 怪しまれるのも仕方がないか。 ここらであのことを話してみるか。 「いいや、なに、携帯からアクセスできる掲示板というものを見つけてな、そこに顔面刺青の妹――つまり無桐伊織と共に行動していると玖渚友から聞いたのだ」 「え?玖渚ちん?お前なんで玖渚ちん知ってるの?」 「ネットカフェでやり取りしただけの話だが、それがどうした」 「だって玖渚ちんに会ったなんて一言も……」 「実際会っていないからな、ネットカフェからパソコンを通して通信しただけだ」 玖渚友とも繋がりがあったか。 それにこういう形で意表を突けるとは思わなかった。 しかし、少しやり過ぎたか? 怒らせてしまうと交渉も何もないからな。 そう思った刹那、視界が傾いた。 直後、衝撃と同時に誰かの声。 突き飛ばされたと理解する。 そこまで怒らせるつもりはなかったのだが。 …………何も聞こえないな。 おかしい。 首を上げるといたのは少女一人だけだった。 哀川潤はどこへ消えた? 「哀川潤がどこへ行ったか知っているか?」 「潤さん……ですかあ?オレンジ色の……髪をした人がやって……ゆらぁり……きてえ」 乱入者が現れて哀川潤だけを連れ去っていった……のか? 目的が見えないが……突き飛ばされたのは哀川潤に助けられたということなのだろうか。 まあいい、目下のところ考えるべきはこの二人きりの状況をどうするかだ。 逃げてもまた追いかけられる可能性がある以上迂闊には動けんがこのままでも危ない。 「そういえばお前の名前を聞いていなかったな」 「玉藻ちゃんはあ……西条玉藻って言うんですけどお……ゆらぁり……でも教えちゃだめって言われていてえ」 西条玉藻か。 しかし名前がわかったところでどうにもならんな。 ……そうだ。 「服が泥だらけだが大丈夫か?せっかくだから着替えをやろう」 「……いいんですかあ?」 「ああ、俺には見ての通りサイズが合わん、気に病む必要はない。 ただ着替えなんて見るものじゃないからな、服をやるから向こうで着替えてこい」 ごそごそと取り出したメイド服を渡すとナイフを持ったまま行ってしまった。 よし、今のうちに逃げよう。 【1日目/真昼/E-6】 【貝木泥舟@化物語】 [状態]健康 [装備]デザートイーグル(8/8)@めだかボックス、スマートフォン@現実 [道具]支給品一式×2、誠刀・銓@刀語、日本刀@刀語、狼牙棒@めだかボックス、金槌@世界シリーズ、予備弾(40/40)、「箱庭学園の鍵、風紀委員専用の手錠とその鍵、貴重品諸々、ノーマライズ・リキッド」(「」で括られてる物は現地調達の物です) [思考] 基本:周囲を騙して生き残る 1:玖渚と手を組む代わりに黒神めだかの悪評を広める 2:ランドセルランドから離れる 3:麦藁帽をかぶり、釘バットを持った男(軋識)に出遭ったら伝言を(伝えられれば)伝える 4:球磨川禊と会ったら同盟を提案 5:怒江はとりあえず保留 6:零崎、真庭、黒神、鑢、西条玉藻、無桐伊織とは出来れば接触しない [備考] ※貴重品が一体どういったものかは以後の書き手さんにお任せします。 ※取得した鍵は、『箱庭学園本館』の鍵全てです。 ※言った情報(少なくとも吸血鬼、重し蟹、囲い火蜂については話しました)、聞いた情報の真偽、及びそれをどこまで理解したかは後の書き手さんにお任せします。 ※哀川潤とほとんど情報交換できていません ※哀川潤との会話から、戯言遣い、玖渚友、零崎人識、無桐伊織が知り合い同士である可能性に気付きました ◆ 貝木を突き飛ばした哀川潤は今、太い橙色の三つ編みの髪をした少女――想影真心と相対する。 「ごほっ……真心ちゃんさあ、あぶね!」 否、相対というには緊迫していた。 貝木を庇うために真心の突進の威力を全てその身に受けたためかあばらを何本か折ったらしい。 「■■■■■■■■!!」 哀川潤の話を聞く素振りは一切見受けられずその矮躯ながらも《暴飲暴食》を繰り出す真心。 溜めの隙をついてすかさずバク転で回避する哀川潤。 「髪切ってないって時点でやっぱりって思ってたけどめんどくさいとこから連れてこられちまってんな、真心ちゃん。 せっかく玖渚ちんやいーたんのこと聞けるかもってとこだったのに邪魔した代償は高くつくぜえ?」 「■■■■■■■■■■■■■■!!!!」 《暴飲暴食》を空振ったことで大きな隙が生まれるがそれをつくようなことはしない。 まるでわがままな娘を宥める母親のように言い聞かせるのみ。 戯言遣いの名を出したことで真心は殊更激昂するが、お構いなしのようだ。 哀川潤は笑う。 いつものようなニヒルな笑みではなく、かつて大厄島の頂上で相見えたときのように。 「ま、しょーがねーなー、子供の躾は母親の責任ってことで。 始めようぜ、真心ちゃん。 盛大な親子喧嘩と行くか!!」 ここに最強と最終の頂上決戦が始まる―― 【1日目/真昼/E-5】 【哀川潤@戯言シリーズ】 [状態]あばら数本骨折 [装備] [道具]支給品一式×2(水一本消費)、ランダム支給品(0~4)、首輪、薄刀・針@刀語、トランシーバー@現実 [思考] 基本:バトルロワイアルを潰す 0:真心と喧嘩する 1:とりあえずバトルロワイヤルをぶち壊す 2:いーたん、 玖渚友、想影真心らを探す(今は玖渚を優先) 3:積極的な参加者は行動不能に、消極的な参加者は説得して仲間に 4:後で玉藻ちゃん拾いに行かねーとな 5:阿久根の遺言を伝える 6:もうちょっと貝木と情報交換したかった [備考] ※基本3の積極的はマーダー、消極的は対主催みたいな感じです ※トランシーバーの相手は宇練銀閣です ※想影真心との戦闘後(無桐伊織との関係後)、しばらくしてからの参戦です ※主催者に対して仮説を立てました。詳細は以下の通りです。 ・時系列を無視する力 ・死人を生き返らせる力 以上の二つの力を保有していると見ています 【想影真心@戯言シリーズ】 [状態]解放 [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:壊す。 1:いーちゃん。狐。MS-2。 2:車。 3:赤。 [備考] ※ネコソギラジカル(中)、十月三十一日から ※三つの鎖は『病毒』を除き解除されています ※忍法断罪円を覚えました。 ※虚刀流『雛罌粟』、鑢七実の戦闘スタイルの一部を会得しました ◆ 「あれえ……?」 メイド服を着た見た目だけは女子中学生の玉藻が出てきたそのとき。 周囲に誰もおらずぽつん、という擬音がとてもとても似合いそうな状況だったという。 【1日目/真昼/E-6 ランドセルランド入口】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態]身体的疲労(小) [装備]エリミネイター・00@戯言シリーズ、メイド服@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2 [思考] 基本:どうしましょう……かねえ 1:敵が出たなら―――ずたずたに。 [備考] ※「クビツリハイスクール」からの参戦です(正確には、戯言遣いと遭遇する前からの参戦)。 ※毒刀の毒は消えました。 支給品紹介 【誠刀・銓@刀語】 貝木泥舟に支給。 「誠実さ」に主眼が置かれており、人間の姿勢を天秤にかけるように、人によって受け取り方さえ違う曖昧な刀。 刃なき刀であり刀の柄と鍔だけしかない。 【日本刀@刀語】 江迎怒江に支給。 刀語一巻でとがめが所持していたもの。 ようするに普通の日本刀。 【狼牙棒@めだかボックス】 江迎怒江に支給。 宗像形の持つ暗器の一つ。 物理法則を超越した収納方法はあの世界では必須スキルのようです。 【金槌@世界シリーズ】 真庭狂犬に支給。 くろね子さんの探偵七つ道具のひとつで、ドアノブを破壊するのに使用された。 ピッキング?なにそれ知らない。 【デザートイーグル@めだかボックス】 真庭狂犬に支給。 宗像形の持つ暗器の一つ。 装弾数8発の自動式拳銃。 【メイド服@戯言シリーズ】 真庭喰鮫に支給。 春日井春日が骨董アパートで戯言遣いを誘惑するのに使ったり。 【スマートフォン@現実】 真庭喰鮫に支給。 普通のスマホ。 哲学思考(欠落思想) 時系列順 猫の首に鎖 哲学思考(欠落思想) 投下順 猫の首に鎖 黒いスーツとランドセル 貝木泥舟 かいきバード 再覚醒 哀川潤 撒き散らす最終(吐き散らす最強) 再覚醒 西条玉藻 撒き散らす最終(吐き散らす最強) 赤く染まれ、すれ違い綺羅の夢を 想影真心 撒き散らす最終(吐き散らす最強)
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「鬼」そして《鬼》 ◆mtws1YvfHQ 「殺したい」 気付けば、そんな言葉が口から漏れ出していた。 少し慌てて周りを見渡したけど、幸い火憐さんは居ないみたいだ。 危ない危ない。殺したい。 二手に分かれてるからって、油断し過ぎだ。 何も見付からないからって、暢気が過ぎる。 殺したい。 無意識とは言え、あんな事呟くなんて、火憐さんに聞かれてたらどうなってたか。 考えたくもない。殺したい。 それはそれとしても、 「……だけど本当に多いな」 本の数が多過ぎる。 閉架だから難解な物が多いだろう程度にしか思ってなかったのに、無駄に多い。殺したい。 難解な事ばかり書かれた研究書から、持っただけで崩れそうな古書と何から何まで、 「無駄に多いと言うか……殺したいと言うか……」 また言ってしまった。 周りを見渡すけど、やっぱり火憐さんはいないみたいだ。 大丈夫、か。殺したい。 さて、止めていた手を動かさないと。 「…………こんな所に僕を連れ込んだ理由は殺し合いの促進で間違いないだろう。だけど、火憐さんが連れて来られた理由が分からない」 適当に持った本は古書だった。 いらないな。殺したい。 「特別でもない、異常でもない、ただの普通の、ただの一般人を巻き込む理由が、分からない」 それこそ学園の特別や異常を集めて殺し合いをさせれば良いのに、なんで、よりにもよって一般人を連れ込んだのか。 験体名「枯れた樹海」。 異常は「殺人衝動」。 全ての道がローマに通じるように、全ての思考が殺人に通じる。殺したい。 そんな僕が衝動を堪え切れなくなれば、待っているのは屍の山。 は、流石に無いだろう。 僕より強い人間はいくらかいるだろうし。殺したい。 だけど誰も殺さずに済む事はない、と思う。 「……ん?」 一応裏の情報がなさそうだから適当に、本を選んで取ったつもりだったけど、違う。 これは、ファイルだ。 表紙を見てみよう。 「――――」 適当に引いたのに、予想以上の大当たりが出た。 参加者名簿と書かれたファイルだ。 開ける前にその辺りの本を引き抜いて中身を軽く確認する。 けど、特に何も書かれていない。殺したい。 他も引き抜いては中身を見て戻すけど、なにもなかった。 「さてと」 結局、重要そうな物はは参加者名簿以外は見付からなかった。殺したい。 近くを軽く見渡してみても、何かあると言う事はなさそうだし、 「何が書いてあるのか」 ページを開く。 最初に書かれていた名前は、 「…………誰?」 知らない人だった。 最初は都城王土か黒神めだかのページだと思ったのに。殺したい。 念の為に次のページを見ても違う人。 ページをざっと流してようやく都城王土、ではなく黒神めだかと書かれたページに出た。 まあ、居るのは予想通りだ。 フラスコ計画。 新しい候補。 その彼女が居ない方に違和感を感じるぐらいだ。 と言うか、彼女の『異常』が何かもう分かっているみたいだ。 『異常』の名前は「完成」。 他人の『異常』を完成させる『異常』。 なるほど。殺したい。 『完全な人間』の創造と、「完成」の『異常』。 無関係ではなさそうだ。 これに彼女が乗るかどうかは完全に別問題だけど。殺したい。 「次は」 人吉善吉。 言っては何だけど、予想通りだ。 黒神めだかが居ればまずいると思った。 速い内に会いたい。殺したい。 次は、球磨川禊。 次。 「……僕のページもあるのか」 次には丁度、僕自身の姿があった。 あるのに一瞬驚いたけど、参加してるんだから当然の事か。 詳しく見ると当然の事ながら「枯れた樹海」の異常の事も載っていた。 あまり、普段ならいざ知らず今の状況下で、知られたい事じゃない。 特に火憐さんには知られたくない。殺したい。 「――――――」 周りを確認してから、コッソリとそのページの根元から引き千切り、ポケットに仕舞う。 何時の間にか随分と後ろのページまで来ていた。 少し前に戻る途中、阿良々木の文字が目に付いた。 ただし下の名前は火燐では暦だった。 名前の横にある写真を見るけど、どう見ても男。 ファイヤーシスターズなのに男とは如何に。 と、思いきや、この人には妹が二人居るみたいだ。殺したい。 妹の一人が火燐さんと言う事か。 そのままの調子で目を下に向ける。 「――ッ!」 と、あった。 明らかに、『普通』ではありえない、『特別』か『異常』に類するだろう単語がそこに、しっかりと書かれていた。殺したい。 火憐さんに何か『特別』か『異常』の類があると思えないとすると、 「そう言う事か」 火憐さんは巻き込まれただけだ。殺したい。 そう理解する。 「吸血鬼」の名を冠する『異常』。 まさか本物の「吸血鬼」ではないだろうから、その名を冠するに足る『異常』を持った男なんだろう。殺したい。 兄に『異常』があるから、妹にも何かしらあるかも知れないと巻き込まれた。 そう考えるのが自然か。 だけど念には念を入れた方が良い。 次のページを捲る、けど違う人だった。 名前の欄に阿良々木の文字があるページを探せばいいのだから楽な事だ。殺したい。 適当にめくっただけで、あっさりと見付けた。 名前は、阿良々木火憐。 心の中で勝手に個人情報を見るのを謝りながら、見る。 けど、 「良かった……いや、この場合は彼女が生き残るために役に立つ『特別』も『異常』も無い事を嘆きべきなのか?」 『異常』な単語は何一つなかった。殺したい。 精々がファイヤーシスターズ。 良かった。 ページを捲る。 「あれ?」 けど、阿良々木の文字はなかった。 妹が居るんだから次の所に書かれてると思ったのに、予想が外れて何とも虚しい気分に襲われる。殺したい。 念のためのさっきと同じ手順で阿良々木の名前を探すけれど、ない。 もう一度探すけれど、二つしかなかった。 何度探しても同じだった。 「……どう言う事だ?」 何で一番下の妹が居ないんだろう。殺したい。 何かしら今回の事に関わっている、と言う事はないと思うけど、 「もしかして……」 その妹が今回の事に関わっているとか。 次いで、と言うよりも本命で、名前がなかったから都城王土の関わりもあるかも知れない。 いや、最悪の場合は僕以外の十三組の十二人、つまり裏の六人すらも、関わってる可能性もある。 少し考え過ぎかも知れない。 だけど、頭の片隅ぐらいには入れて置こう。殺したい。 それはそれとして、流し見た時に見付けた気になる名字の人達を見る。 零崎。零崎人識。零崎双識。零崎軋識。零崎曲識。 その中の僕を、零崎に似ていると言った、零崎軋識の詳細を見させて貰う。 探すまでもなく、当然の事のように『異常』な文字は書かれていた。殺したい。 《零崎一賊》。 忌み嫌われた殺人鬼。 『殺し名』順列3番目。 血の繋がりではなく、流血で繋がっている一族。 家族に仇なすものを老若男女人間動物植物区別なく容赦なく皆殺し。 そんなことはどうでも良い。殺したい。 それよりも、重要なことは別だ。 理由なく殺す《殺人鬼》。 零崎軋識が僕が零崎に似ていると言った意味が分かった。殺したい。 確かにこれは、似ている。 「殺人衝動」を持つ僕と、意味なく殺す《殺人鬼》の一賊。 もしかしたら、似ていると言うよりも同じなのかも知れない。 だけど違う。 唯一つだけ違いがある。 僕がまだ人を殺していない。 まだ、《殺人鬼》になってはいない。 殺したら同じになるかも知れないけど。 だけど、だからこそ、一つの希望もある。殺したい。 殺す為に生きる一賊。 殺す事で活きる殺人鬼。 殺す者に尽きる殺す者達。 それはつまり、もしかしたら、もしかしたら、もしかしたら、僕に似た衝動を抱えている人達なら、 「だから」 普段を人間生活に生きているのなら、衝動を抑えて生きて行く方法を知っているんじゃないか。 蛇の道は蛇。殺したい。 殺人鬼なら、《殺人鬼》だからこそ、衝動を何とかするコツのような物を知っている人の一人や二人居るんじゃないか。 「殺す方法」に長けていれば、「殺さない方法」に精通するように、「意味なく殺す」のならば、「意味なく殺さない」でいる方法があるんじゃないか。 意味なく殺すと言っても、堪えなければならない時もあるはずだ。 だからきっと、可能性は、なしではない。 「殺す」 会いたい。 「だから」 聞きたい。 「殺す」 話したい。 「だけど」 教えて貰いたい。 「死なせたくない」 殺したい。だけど、死なせたくない。 この矛盾を抑える方法を。 この矛盾に生きる方法を。 軋識みたいな人ばかりかも知れないけど。 話を聞いてくれる人が居ないかも知れないけど。 それでも、この矛盾の答えを、この矛盾の果てを、この矛盾の終わりを、知っている人が居るかも知れない。 僕は、殺したい。 だけど。 僕は、死なせたくない。 だけど、何時かは如何にかなるかも知れない。殺したい。 死なせたくなければ、殺さずにいられるのか。 殺したくなくとも、死なせなければならなくなるのか。 どうか、教えて下さい。 どうか、知っていて下さい。 どうか、どうか。殺したい。 零崎の名字を持った四人の個人情報をしっかりと見終わった後で、その辺りのページを見ていたら、 「――あ」 名前の欄に書かれているのは零崎ではなかったけど、女の子の詳細に零崎の事が書かれていた。 本名は、無桐伊織。 零崎としての名前は、零崎舞織で、最も新しい零崎と言う事らしい。 覚えておこう。殺したい。 時計に目を向ける。 「あれ?」 まだまだ時間があると思ったら、もうあと十五分足らず約束の時間になりそうだった。 あんまり内容を見れなかったけど、少し早目に待ってないと心配だし仕方がないか。殺したい。 「よいしょっ、と」 立ち上がったは良いけど、参加者名簿をどうするか。 少し悩んだけど、刀と一緒に仕舞う。 これは、火憐さんには見せない方が良いかな。 軽く中身を見た段階なのに、奇声を上げて手当たり次第に火憐さんの言う正義を実行しに行きそうな相手しか居ないし、その相手が全部口だけじゃない事は、嘘が書かれてさえなければだけど、軽く見ただけで分かる時点でもう尋常じゃない。殺したい。 別の場所に移動するならしばらく見れないけど、また此処で調べる事になったらゆっくりと見る時間もあるし。 「さてと」 行かないと。殺したい。 何と無く時計を見ると、約束の時間まであと十三分だと示していた。 【1日目/早朝/F-7図書館閉架1階】 【宗像形@めだかボックス】 [状態]健康 [装備]千刀・?(ツルギ)×872 [道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)、参加者詳細名簿×1、宗像形のページ×1 [思考] 基本:殺したいけど、死なせたくない 1:火憐さんと合流、そして守る 2:誰も殺さない。そのために手段は選ばない 3:殺人衝動は隠しておく 4:機会があれば教わったことを試したい 5:とりあえず、殺し合いに関する裏の情報が欲しい 6:零崎一賊の誰かと話がしたい 7:火憐さんに参加者詳細名簿は見せない [備考] ※生徒会視察以降から ※阿良々木暦の情報はあまり見ていないので「吸血鬼」の名を冠する『異常』持ちだと思っています ※無桐伊織を除いた零崎四人の詳細な情報を把握しています ※参加者全員の顔と名前などの簡単な情報は把握しています オオウソツキ 時系列順 悪意の裏には善意が詰まっている 悪意の裏には善意が詰まっている 投下順 善意の裏には悪意が詰まっている 図書館革命!? 宗像形 正義の味方
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今、再び語られる物語 ◆T7dkcxUtJw 「――久しいな、虚刀流」 エリアにして、Eの3。 かつて叡考塾と呼ばれていた、しかし今は誰もその名で呼ぶ事は無い、学習塾跡の廃墟。 その廃墟に、おそらく後にも先にも、営業中も廃業後も訪れたことの無いだろう部類の二人の来訪者の姿があった。 一人は剣士で。 もう一人は忍者。 虚刀流七代目当主、鑢七花と。 真庭忍軍十二頭領がひとり、真庭鳳凰。 奇策士とがめによる、四季崎記紀の完成形変体刀を巡る旅の最中――殺し、殺された間柄だ。 「そう、おれは間違いなくあんたを八つ裂きにしたはずなんだが……なんで生きてるんだ?」 「そんなことは我が聞きたいな。我とて、たしかに一度死んだ我が何故こうして生きているのか、理解できていないのだから。 何らかの忍法によるものか、それとも大陸に伝わるといわれる死体を使役する秘術の類か……」 どちらにしても眉唾の域を出ないがな、と鳳凰は続ける。 その姿は、七花の知る真庭鳳凰とまったく同じもので。 鳳凰と親しい、たとえば真庭人鳥のような人間が見ればまた違った感想を抱くのかもしれないが、少なくとも七花が見る限りでは。 目の前の鳳凰は、偽者とか誰かの変装だとか、そんなチャチなものでは断じてなく――七花が殺した真庭鳳凰本人だった。 しかし、本人だとすれば、誰が、どうやって、何のために――。 「〝誰が〟は十中八九最初のあの声の主、もしくはその協力者であろうな。 〝どうやって〟は現時点ではなんとも言えないが――最後の〝何のために〟はほぼ見当がつく」 「何のためだ?」 「単純な理由としては、暗殺専門の忍者、真庭忍軍の頭領の一人という存在が殺し合いの参加者として適していたということ。 単純でない理由としては――虚刀流、おぬしは我がこうして生きているのを見てどう思った?」 「どう、と言われてもな……。さっき言ったことを繰り返させてもらうが『なんで生きてるんだ?』の一言に尽きるぜ」 「そう、それだ……最後の一人まで生き残った者への褒美は覚えているな?」 どんな願いでも叶える。 優勝者に対する特典として、主催者が挙げたものだ。 これを目的に、参加者が積極的に殺し合うことを主催者は期待したのだろうが。 素直に主催者の言を信じるような参加者ばかりとは限らないのだから、そうそううまくいくものではない。 どんな願いでもなんて嘘くさい。そう感じる参加者もいるだろう。とりあえず七花はそうだった。 だが。 そんな人間であっても、現実としてその力を目の当たりにすれば――揺らぐ。 信じないという、選択肢を失ってしまう。 死んだ人間が生き返る――そんな、常識では計り知れない事例を、まざまざと見せつけられてしまえば。 「……死んだ人間の蘇生、か」 「無論、死者蘇生が本当だからといって、どんな願いでも叶えられる証明になるわけでは無いがな。 それでも、何一つ証拠を見せないよりは、格段に信憑性が上がるはずだ。 我をわざわざ生き返らせたのにはそういう意図もあったのではないかと、我は思っている。こちらとしては好都合だがな」 「……好都合?」 「なにはともあれ、こうして復活できた。もとより二度も殺されてやるつもりも無かったが、願いが叶うというのならばなおさらだ。 ――我は再び、我等の目的のために全力を尽くす」 目的。 我等の目的。 真庭鳳凰の――真庭忍軍の目的。 それはすなわち、困窮極まり滅亡の危機に瀕していた真庭の里を救うことだ。 しかし――救う対象はもはや存在すらしていない。 真庭は、もう。人も、里も、すべてがすべて、終わってしまっているのだから。 真庭鳳凰自らが。 終わらせてしまったのだから。 それでも、その目的を掲げ続けるということは、つまり―― 「最後の一人になって……願うつもりなのか。真庭の里の、復興を」 「少しでも可能性があるのであれば、我はそれに賭ける。 虚刀流、おぬしにはあるか? 他の全ての人間を殺してでも、叶えたい願いというものが」 「無いと言ったら……正直、嘘になるな」 彼女に、もう一度会える。 考えたことはなかった――否、考えることを無意識に拒絶していたのかもしれない。 それは、絶対にありえないことだと、わかっていたから。 考えたところで、現実は何一つ変わらないし、時が巻き戻るわけでもないと理解していたから。 けれど、今は。 「乗る気であれば、我と手を組まぬか虚刀流」 「手を――組む?」 「この会場は広大で、参加者はあちらこちらに散らばっている。数を減らすのなら、二人で分担した方が効率はいいだろう。 我はおぬしの力を利用したい。おぬしも我の力を利用すればいい。 勿論、目的がともに最後の一人である以上、最終的な破棄を前提とした同盟だが――互いに、悪い話ではないはずだ」 「………………」 おそらくは、これが鳳凰が七花に接触した理由なのだろう。 七花の力を誰よりもよく知るのは、散々その力に翻弄され続けてきた真庭忍軍に他ならない。 故に、七花と敵対するよりは、味方とは言えずとも当面の協力体制をとっておいた方が有意義だと鳳凰は理解していた。 互いに沈黙したまま、時が流れ。 やがて――七花が動く。 傍らに置いてあった自身の背負い袋から、幾つか中身を取り出すと、残りを背負い袋ごと鳳凰に投げ渡す。 「……おれにはさっぱり理解できないものばっかりだからさ。あんたが持っていた方がうまく使えるだろ」 「ふむ。つまり、我と同盟を組むという解釈でいいのだな?」 「そう受け取ってもらって構わねえよ。まさか、またまにわにと同盟なんて考えちゃいなかったがな」 投げ渡された背負い袋を、鳳凰は確認する。 背負い袋は鳳凰にも支給されたものと完全に同一のものだが、中身は少々異なっていた。 鳳凰のものに入っていた道具が入っておらず、逆に鳳凰になかったものが七花の側にはある。 どうやら、人によって背負い袋の中身は異なるようだ、と鳳凰は推測する。 「念のため、何を取り出したか確認させてもらえるか?」 「大半はそのままだぜ、水と食糧、それと書くものと地図を抜いただけだ。おれはそれだけあれば十二分にやっていけるからな。 道具の記録を読み取る――記録辿りだったか? それがあるあんたなら、見たことが無い道具でも用途はわかるんだろうしな」 「成る程、余計な荷物はいらない、か。 ……とはいえ、袋が無くては持ち運びに不便だろう。暫し待っていろ」 鳳凰の手で、二つの背負い袋の中身が手際よく移される。 ものの一分で、七花が渡した背負い袋は持ち主の元へと戻っていた。 「……あれ、中身が空じゃねえぞ?」 「おぬしに道具が無用なように、我に食糧は不要なのでな。必要になったとしても、この先いくらでも奪える。 道具の礼だ、それはおぬしが持っていろ」 「そりゃありがたいが、大丈夫なのか?」 「一日二日の絶食程度で参っていては、しのびは務まらぬのでな」 さて、と鳳凰は七花に背を向けると、部屋の扉へと歩き出す。 「行くのか」 「ああ、用件は済んだ。これ以上、ここに留まる理由も無い」 「まずは何処を目指すんだ? 別々の方向に向かった方が、何かと都合がいいだろ」 「ひとまず東へ進もうと思っているが、状況次第では変わるだろうな」 「東か。わかった、覚えておくぜ」 地図によれば、現在地から北東方面には町が。西南方面には因幡砂漠が広がっている。 砂漠と町であれば、町の方が人は集まるだろうから、鳳凰の選択は妥当だろう。 因幡砂漠がこんな場所にある件については七花はあえて無視する。突っ込んでいたら話が進まない。 「では――さらばだ、虚刀流。 おぬしが死ぬまでに、一人でも多くの参加者を殺すことを祈っているぞ」 「ああ、じゃあな鳳凰。 ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているけどな」 そんな別れの挨拶を交わして、鳳凰の姿は消え。 廃墟には、鑢七花一人が残された。 ――これで、よかったのか? 「知るかよ、そんなこと。おれみたいな馬鹿に、何が正しいかなんてわからねえ」 「おれはただ、自分勝手に――好きに生きるだけだよ」 「とがめ」 ■ ■ ――と、まあ、そんな感じの出だしで。 対戦格刀剣花絵巻! 剣劇活劇時代劇! 刀語の――もとい。 鑢七花の物語の、はじまりはじまり♪ 【1日目/深夜/E-3/学習塾跡の廃墟】 【鑢七花@刀語】 [状態]健康 [装備] [道具]食糧二人分、水、筆記用具、地図 [思考] 基本:優勝し、願いを叶える 1:真庭鳳凰とは違う方面に向かう [備考] ※時系列は本編終了後です。 【1日目/深夜/E-3】 【真庭鳳凰@刀語】 [状態]健康 [装備] [道具]支給品一式(食糧なし)、名簿、懐中電灯、コンパス、時計、ランダム支給品2~6個 [思考] 基本:優勝し、真庭の里を復興する 1:東へ向かう [備考] ※時系列は死亡後です。 阿良々木暦の人間サンドバック 時系列順 戯言語 阿良々木暦の人間サンドバック 投下順 戯言語 START 鑢七花 虚刀流、道を決める START 真庭鳳凰 スーパーマーケットの口戦
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球磨川禊の人間関係――鑢七実との関係 ◆xR8DbSLW.w ■ ■ ■ 第-3槽『球磨川禊の愛した置き土産』 ■ ■ ■ ――おいおい、旧知の二人の決闘だぜ。まさか邪魔するだなんて言わねえよな―― そんな傍迷惑な、耳障りな、けれど真っ当なことを言われ、 わたしは車を降りたところまではよかったけれど、二人の決闘を傍から眺めることにした。 二人は楽しそうに、戦っている。 黒神めだかについてわたしが知っていることはほとんどないけれど、ただならぬ間柄であることは伝わってきた。 気持ちは分からないでもない。 わたしも七花と決闘をして死んだ身。 邪魔立てされるとなるならば、そんな雑草は早々に刈るべきだ。 だからわたしは静観していた。 静かに、 邪魔にならないようにひっそりと。 二人は泥臭く極めて乱暴な戦いを繰り広げている。 そもそもわたしはどうして車を降りたのでしょう。 分からない。 後ろの三人が煩わしかったというのはある。 確かにその通り。 わたしには雑草が群がっているようにしか見えない。 邪魔な雑草は刈り取りたくなる。 わたしの数少ない趣味の一つ。 しかしそれだけだろうか。 違う、と思う。 少なくとも、この一同と渡り歩くぐらいなら、と球磨川禊さんを選んだ。 まるで、わたしの心に何かが、『螺子込まれた』みたいに。 わたしと禊さんの人間関係――欠落関係。 未だ、よく分からない。 よく分からないが、付いてきている。 不思議だ。 ――不思議よね。 七花はとがめさんと、日本中を練り歩いていた。 その結果、腑抜け、錆びていた。 だからわたしは七花の錆をふるい落としたのだけれど――今度はわたしが錆びているのかしら? 『ぬるい友情』で。 ぬるい水の入った、水槽の中で――。 それはとても可笑しいことだ。 くすくすと笑いだしてしまいそうだ。 七花はどうしてとがめさんと練り歩いていたのかしら――? と、悩むまでもなく覚えている。 一目惚れと言っていた。 惚れっぽい子だ、と我が弟ながらに思うけれど、事実とがめさんと七花の相性は、そこそこによかったのでしょう。 だから一緒に居た。 所有者と刀、あるいは一組の男女として。 だとしたら。 だとしたら――わたしは、禊さんに惚れている? いや、 考えておきながら、その理屈はおかしい。 七花は七花。 わたしはわたし。 同じ鑢家と言えども、そこまで同じと言うわけではない――とは思う。 思いたいのだけれど、どうなのかしら。 まあ。 どちらであれ、わたしが錆ついているのは不本意ながら――なのかしら、確実なのだろう。 球磨川さんが幸せそうに戦っている。 別にそのことはどうとも思わないけれど、仮にここで禊さんが殺されたら、わたしはどうするでしょう。 わたしが『見たところ』、殺人者扱いされておきながら、黒神めだかに殺意は窺えないけれど、 なんていうんでしたっけ? けーたい、そう、けーたいとやらで見させられた殺害映像に、確かに黒神めだかさんは映っていた。 だから、ここで禊さんが死んでもおかしくない。 その時、わたしはどういう行動を――どういう心情を、思い描く。 わたしの親は、死んでいる。 そのことに深い意味も、深い感慨も得られなかった。 他にわたしと近しい者は、今まで七花ぐらいなものだった。 だけど、本来わたしは七花よりも先に死んでいる。 七花が死んだ時の感情なんて知る由もない。 今もどこをほっつき歩いているのかは知らないけれど、ここでも死んでない様だし。(まあ簡単に死なれてもわたしだって困っちゃうわね)。 わたしは。 わたしは、死んでもらいたくない人間の死に立ち会った経験なんて、殊の外見てきていない。 分からない。 分からないけれど――うすら寒い。 この感情がもしも。 もしも、彼の言う『三つのモットー』の影響だとしたら、彼には責任を取ってもらわなきゃなりませんね――。 なんて考えていると。 車が去っていった方向から、人影が窺えた。 短く切りそろえた、ここに来て何度か見ているが相変わらず見慣れない構造の服をきた女――。 戦場ヶ原ひたぎさん、とおっしゃいましたか。 彼女が刀を持ち、駆けている。 ――車の時でも感じていたけれど、必死で隠すよう努めていたらしいけれど。 めだかさんが現れてから、彼女の殺意が大きく肥大化したのは知っていました。 だから警戒した。 めだかさんが殺されて困ることは、生憎わたしにはありませんが ――ともあれ、決闘の邪魔立てをしてもらっちゃ、なんとなく困ります。 禊さんも楽しそうに戦っていますし。 外部からの干渉は出来る限り避けたいところ―― と、動いた時。 ――おれの娘―― また耳障りな声がする。 なんなんでしょうかこの人は。 肝心な時に役に立たない癖して――あなたに構っている場合ではないというのに。 ――錆びるのは勝手だが――あまり支障をきたすようじゃあ――鑢の名が泣くぜ―― いきなり何を言い出すんでしょう。 あちらだって、今は動くべき場面であることは分かっていように。 ただ。 ここでわたしが失敗したというなら、四季崎の声に耳を傾けてしまったことに尽きるでしょう。 その尤もらしい、そして今しがたわたしが考えていたことに関することだったからといって、少し頭を働かせてしまったことだ。 その幾許か足を止めてしまった間に、ひたぎさんは――もう近くに居た。 禊さんは目を丸くしている。 何故彼女がここに居るんだろ言わんばかりに。 そして標的である黒神めだかさんの髪は、色素が抜け落ちたように真っ白で、胸には大きな螺子のが、貫かれている。 しまった。 なんて、思わなかったが四季崎の意図がなんとなく、見えてきた。 四季崎は、ひたぎさんの支援をしただけだ。 わたしが邪魔しないように――敢えて耳を傾けてしまうことを回りくどく婉曲に、もったいぶって、言ったのだろう。 ――まあ一度は戦場ヶ原ひたぎも消えてほしいとは思っていたが――ここで登場するとは面白い―― 不敵な声が。 耳障りな声が またしてもわたしには聞こえる。 ――完成(ジ・エンド)と完了――どちらに転んだとしてもおれにとっては興味深い―― あくまで四季崎記紀は刀鍛冶だ。 おそらくわたしのことも刀としか思っていないし、ひたぎさんやめだかさんも、実験道具の一部としか見ていないだろう。 それに憤慨をするわたしではないにせよ、四季崎の思惑通りに事が進んでしまったのは面白くなかった。 けど、思い上がらないでもらいたいわ。 この距離ならば、間に合わないことはない。 忍法足軽と虚刀流の足運びによる超接近。 もしくはとがめさんを切ったように、斬撃を飛ばして殺してしまいましょうか――どちらでもわたしは構いません。 だけど。 わたしには、一瞬何が起きたのか分からなかった。 正鵠を射るならば、『見えた』――『理解した』。 ひたぎさんはこちらを制するように、何かを投げる。――見たところ(といってもわたしの知るそれとは随分趣が異なりますが)火薬弾でしょう。 だから、地面に思い切りぶつけられた衝撃で、爆発した。 不承島で戦ったまにわに……蜜蜂さんでしたか、彼の使った忍法撒菱指弾に比べたら当然ですが精密性はない。 ――でも、火薬弾にそこまでの精密性は問われない。 火薬弾で恐いのは、爆熱よりも爆風。 わたしの動きを止めるのには十分な爆風が、わたしを襲う。 肌が焼かれるようだ。 まあ、この程度の外傷ならば、放っておいてもすぐに治ってしまうんでしょうけれど。 この場合それは関係ないんです。 今、動きを止められたという事実が、大きいのです。 巻き起こされた爆風は、禊さん、めだかさん、めだかさんを襲わなかったらしい。 これが冷静な計算通りと言うのであれば、成程、とどのつまり雑草ごときとは言え、大したものです。 風が晴れて、わたしも顔を覆うようにしていた手を、降ろす。 視界が十全になった。 よく見える。――よく『見れる』。 目の前に広がる景色は、ますます面白くなかった。 わたしが何かを施せる時間もなく。 次々と物語は刻まれていき――――球磨川禊が、死んだ。 ■ ■ ■ 「かはは――おお、人間未満よ死んでしまうとは情けねえ」 禊さんが死んだ直後というには間が空いたが、 ひたぎさんもめだかさんも、何も行動を起こさない硬直状態、膠着状態が続いた時。 ――いきなり。 いきなり――いた。 戦場ヶ原ひたぎの目前に、黒神めだかの目前に――その奇妙な風体の少年は、零崎人識さんは、存在した。 何の予兆もなく、何の前兆もなく、唐突にとしか言いようのないタイミングで、 二人が同時に瞬きした瞬間を狙ったとしか説明のつかないようなタイミングで以もってして、人識さんは、存在した。 「いやはや全く、恐れ入るぜひたぎちゃん。 てめーの殺意は確かに研ぎ澄まされていたけどよ、まさかこのバケモンばっかの魔窟ん中に飛び込むたあ、思わなかったぜ」 大して面白くはない状況ですけれど、人識さんは笑っております。 それを二人を見つめ、呆気に取られたように――少し、違いますね。 呆然と立ち尽くすしかないように、微動だにしません。 ひたぎさんは刀を握ったまま、黒神さんは蘇生されてから数分経ち体勢を整えつつあった状態から、ぴたりとも、微動だにしない。 ちなみにわたしはと言うと、本来の目的も達することが出来ず、今更動いてもしょうがない、 と禊さんとめだかさんとの戦いを観察していた場所に、座りなおしていました。 まあ、禊さんも程々になったら蘇生(かえって)こられるでしょう。 「まあ、一度寝とけよ」 そういって人識さんは、ひたぎさんの身体をしっかりと固定して、首筋に手刀を降ろす。 簡単に決まるものとは思えませんが――手口としては鮮やかなものでした。 ひたぎさんは、意識を失い、ぐったりし始めました。――身体が倒れることはなく。 まるで何かに支えられている……糸、ですかね。 「ふむ、雲仙二年生の鋼糸玉(ストリングボール)を思い出すが――原理は少し違うようだな」 「鋼糸玉ってのがわからねーが、しかし大方それとは別もんだと考えてもらえばいい。 かはは――曲絃糸がそうそうある技術でたまるかってんだ」 「面白いな、今度私に教えて頂きたいものだ」 「生憎だが一子相伝門外不出なものでね」 戯言だけどよ――と、話を締めくくる。 見たところ、糸を使った拘束術、と言ったところでしょうか。 人識さんの言葉の正否はともかく、もう一度見ないと、完璧には真似できそうにありませんね。 難しそうです。 と人識さんが拘束を解いたのか、めだかさんは自由に身体を動かし始めた。 柔軟体操らしいです。 ふむ、距離として遠いというわけではありませんが、糸は近くで見ないと流石に分かり辛くはありますね。 「まあよ。ひたぎちゃんがこれじゃあ、おめーが幾ら呼びかけたって無駄だぜ。 てめーら揃って一回落ち着けってんだ。正しいことやってりゃ許されるたぁ、思っちゃいけねーぜ」 「しかし後回しにしろ、いずれはしなくてはならんことだ。 それに貴様零崎人識だろう? 聞いとるよ――勇あり少年・供犠創貴小学生から殺人鬼だから気をつけろとな」 「あぁ? なんだってまた――って供犠創貴ってあのやろーか……全く不都合っちゅーか不通っちゅーか」 「そんな輩にみすみす戦場ヶ原上級生の身体を貸すのは、私としては心苦しいばかりだ」 「 ―― 」 「 ――― ――」 まあ。 わたしにとってはどうでもいい会話の瑣末は置いておきましょう。 ひたぎさんがどうなろうとも、わたしの知る由ではありません――と。 ――おれの娘よ―― またしても耳障りな、声がする。 四季崎記紀ですね。 ……面倒臭い。 「……はあ」 ――ため息すると幸せが逃げるっていうぜ――ってのも今更かい―― 「嫌味を言うためだけに喋ったのなら散りなさい、耳障りで目障りです」 ――まあ、待てよ――これでもお得情報を持ちこんで来たつもりだぜ―― この方の言葉を鵜呑みするのも危うげですけれどまあ、一応聞いておきましょうか。 ――人間未満――球磨川禊――どうしてあいつは、今になっても復活しないと思う?―― 「さあ、先ほどだって随分と間を開けて復活なされましたけれど」 ――じゃあ質問を変えようか――どうして球磨川禊は黒神めだかの盾になったんだと思う?―― それは。 そういえば、それはどうしてでしょう。 黒神めだかが何回殺されようと、その度に復活させればいい。 盾になってまで死ぬ必要が、どこにあるんでしょう? ――こういう考え方は出来ねえか――あいつはもう人の死を『なかったこと』には出来ない――もう蘇生は出来ない――と―― ……。 …………。 ………………。 それは、確かにそう言うことでしょう。 ――第一、何回も何回も蘇生出来てちゃあ――バトルロワイアルの意味がまるでないだろうよ―― そう、だ。 改めて考えると、その通りです。 あまりに彼が何気なく使うものだから、そういったことを、一切考えていなかった。 けれど簡単なことです。 簡単すぎることです。 殺し合いで、ばんばんと蘇生されては――たまりません。 ――だからよ――球磨川禊は――もう還って来ねえってことかもしれねえのさ―― どくん、と。 その時胸が鳴った。 大きく、 明確に。 どくん、どくん。 高鳴りが止まらない。 どうして、でしょう。 七花がとがめさんの死を知った時、どんな反応をとっていたんでしょう。 分からない。 けれど単純な七花のことです。 泣いたのでしょう。 声をあげて、 恥も外聞もなく、取り乱して。 わたしは、どうだ。 どうだ。 どうだ? 「戦場ヶ原――ひたぎ」 わたしは、ポツリと名前を零す。 彼を殺したのは、あの雑草だ。 殺してしまっても、いいだろう。 固よりわたしは全員を殺すつもりで、ここにいる。 む、と。 めだかさんがこちらを向く。 人を観察する様なその目は、わたしと似ているようで、正反対の様に思えます。 けれど、どうしてか、その顔が、徐々に滲んでいく。 ……ん? 「どうした、貴様。泣いておるのか」 めだかさんに、そう言われる。 そう言われたら、そうなのかもしれない。 何故泣いているんだろう。 何故喚いているんだろう。 静かに――涙を流している。 気がつけば、わたしは駆けていた。 人識さんが背負った、その短髪の女に向かって。 「おい、人識殺人鬼。……一先ず戦場ヶ原上級生を何処かに避難させろ。貴様よりも、あやつの方が、危険そうだ」 「何処かって何処だよ」 「好きにするといい――!」 言いながら、わたしの貫手――虚刀流『蒲公英』を放ったその手を掴む。 その間に人識さんは、戦場ヶ原さんを背負って、人識さんは離脱する。 姿が見えなくなった頃、わたしの手首から、手を離す。 「退いていただけませんか?」 「断るよ。私もあやつにはまだ用が有るんでな」 それに。 と、めだかさんは言葉の末を継ぐ。 「貴様は球磨川と一緒に居たということはおよそ『過負荷』なのであろう――」 過負荷。 まいなす。 まいなす十三組。 禊さんは、そう言っていた。 三つのモットー『ぬるい友情』『無駄な努力』『むなしい勝利』。 ――だとしたら、わたしは。 「そういうことかも、しれませんね」 「ふん、だとしたら。話は早い――貴様も週刊少年ジャンプは読むのであろう? こういうときは、こう言うものだ」 不敵な笑みを。 零す。 めだかさんは声高らかに。 「ここを通りたければ、私を倒してからしろっ!!」 声高らかに、そう言った。 ――頭に乗らないでくださらないかしら。 雑草が。 「これこそまさに、めだ関門!!」 「五月蠅い」 ■ ■ ■ 第-4槽『球磨川禊のもたらした歌詞が欠けている鎮魂歌』 ■ ■ ■ 戯言遣いくんたち一行から、戦場ヶ原ひたぎちゃんと零崎人識くんが抜け出している経緯について簡単に説明しよう。 それは球磨川くんたちが車を降りてから案外直ぐのことだった。 「車を止めなさい――さもないと、落とすわよ」 八九寺ちゃんの記憶をなかったことにしたのをまるで無碍にするように、 殺意を以て戦場ヶ原ちゃんは戯言遣いくんの首に、斬刀・鈍の刃を寄せたんだ。 まあ、戯言遣いくんに、勿論なす術はなかったし、人識くんは車を運転中だったから、その凶行を未然に防ぐことはできなかった。 そして成す術なく素直に戦場ヶ原ちゃんを降ろした。 羽川ちゃんも降りて話し合いをしたいと主張したけれど、戦場ヶ原ちゃんの気迫には屈せざるを得なかった。 そんでまあ、戦場ヶ原ちゃんは来た道引き戻り、いよいよもってめだかちゃんと球磨川くんを殺した訳だ。 最近の若者ってのは刃物をブンブンと振り回して危なかっしいねえ。 じゃあ次は人識くんに関してだが、察しの通りだろう。 気まぐれで戦場ヶ原ちゃんと行動を共にしていたが、彼は殺人鬼にして人が良すぎるみたいでね。 放っておくって選択肢をとれなかった。 まあ、彼の言葉を借りるとするなら――『傑作』というわけさ。 あるいは、『戯言』なのかもしれないね。 かくして男一人と女二人の三人旅。うち二人は記憶消失と言うおかしな事態になっているが。 その三人旅について、それでは焦点を当てていこうと思う。 といっても、特別語ることはない。 ランドセルランドに着いて、暇を弄ぶように迷子案内センターでくつろいでいる。 それだけだよ。 車はと言うと、勇気ある羽川翼ちゃんのお陰で仕舞えているぜ。 その時の戯言遣いの顔ときたら、確かに傑作だったにせよ、ここはさらなる蛇足だ。省かせてもらおうか。 真宵ちゃんと羽川ちゃんが遊んでいるのを、遠巻きに眺める戯言遣いくん。 記憶を消そうと嗾けたのは紛れもなく球磨川くんだが、それでも止めなかったのは戯言遣いくんだ。 思うところがあるんだろう、と僕は思っているよ。 第三回放送は、彼の心に疵をつけるのには十全だったというわけさ。 十分すぎて、十全すぎる。 人類最強・哀川潤。 人類最終・想影真心。 人類最悪・西東天。 ――なるほど、彼を左右する重要人物がことごとく脱落したとなれば、彼の身に降り注ぐ心労も計り知れないというものだ。 死には慣れている。 関係人物が死んでいくのには慣れている。 そうはいっても、こうも同時に ――それに哀川潤ちゃんのような殺しても死なない様な人間が死んでしまったとなると、それはそれは厳しいものだぜ。 そう言う意味では球磨川くんも、江迎ちゃんと言う同じ過負荷の立場に立っていた人間を失った。 相当な苛立ちだったんだろうね。 彼はああ見えて人一倍他人に、身内に優しいからね。 実質、八九寺真宵ちゃんの記憶の件も、球磨川くんにとってはなんら無為となった八つ当たりなのかもしれない。 球磨川くんのメンタルと言うのは、外堀から攻めていくと、案外あっさり籠絡するもんだ。 そう言った話もさておいて。 いよいよ彼は青色サヴァンと合流を果たそうとしようとするわけなんだが――。 しかし分かんねえかなあ。 まあ分かんねえだろうけれど。 双識くんの視力が戻ったように――八九寺ちゃんの記憶が戻ってきてもおかしくないだなんて、どうして気付かねえかなあ。 ■ ■ ■ 続いては人識くんと、戦場ヶ原ちゃんの二人に関してだけれど、 こちらに関してはよりシンプルだ。 戦場ヶ原ちゃんが人を殺し――人識くんは勝手に双識くんが死んだことにキレている。 尤もその怒りを表に出すほど、人識くんは腐っちゃいなかった。 というより、そっちも大事だけれど、彼の場合、もう一つ放送に関して話が湧く。 ――人類最強が死んだってっことは俺は人を殺していいんかね。と 元々、基本的に人識くんが不殺を貫いていたのは、哀川ちゃん――潤ちゃんの約束があったからだ。 人を殺すなと言う、単純明快口約束。 彼女が死んだ今、彼にそれを守る義理はないんだろう。 守る義理はなく。 貫く意味もない。 だとするならば、彼はどうするだろう。 ……いざとなったら、彼を再び零崎を始めるのかもしれないね。 殺して 解して 並べて 揃えて 晒してやる。 彼の前口上通りに、『零崎』として行動するのかもしれない。 どちらであれ、人類最強と言う、真っ赤な鎖はなくなって、彼は解き放たれた状態だ。 一歩間違えば、 一本踏み違えれば、 最後に残った零崎の片割れとしての才覚を――果たす。 まあ。 それも先の話だ。 先にもないかもしれない話だ。 ――かもしれないなにかの話だ。 現に今、戦場ヶ原ちゃんを殺していない。 殺さず、運んでいる。 一旦戯言遣いたちがいるランドセルランドとは違う場所に。 こんな危険な、全身刃の様な危なっかしい女の子を、八九寺ちゃんたちの傍においておけないという風に感じたらしい。 大きなお世話だ。 少なからず殺人鬼がする心配じゃあない。 それでも、おそらくは戯言遣いくんたちにとっては、ありがたくはあるのだろう。 ガサツなようで細かい気配らせが出来る男の子ってのは魅力的だね。 今はまだ危険信号。 信号で言うなら黄色の状態。 それでも今はまだ、牙を剥かない。 ■ ■ ■ 僕の予想通りと言うか。 まあ、大方の予想通り、鑢七実は大敗を喫した。 しょうがない話である。 彼女の主人公性――も勿論あるんだろうが、この場においては、このバトルロワイアルにおいてはいまいち説得力に欠けるだろう。 純粋に能力の、 単純に生様の、差。 プラスとマイナス。 プラスし続ける者と、マイナスし続ける者の差。 想影真心ちゃんに対してそうだったように、黒神めだかちゃんと鑢七実ちゃんの対戦カードでも、同じことが起こった。 そして鑢七実は最後まで、本気と言う本気を見せなかった。 さもありなん。 それはきっと、鑢七花に対してとっているのだから。 彼女はまだ鑢七花の現状を理解していないからね――そういうことを言える。 正直なところ、今の鑢七花は多少武芸に覚えがある人間ならば勝てるのではないかと言うほど、弱体化している――腐っている。 だから本来はそうした気遣いも無用なのだけれど、 無知と言うものは仕方がない。なんだかんだ、弟が好きなブラコンな姉には、 七花がここまでボロボロにされるヴィジョンが浮かばないのかもしれない。 話を戻そう。 鑢七実について。 というよりも、現在の彼女の身の回りについて。 現在からの近くには既に黒神めだかの姿はない。 めだかちゃんは一通りズタボロにしたあと、戦場ヶ原ちゃんを追いかけてった。 それをボロ雑巾のようになった七実ちゃんは、眺めるしかなかったみたいだね。 とはいえあんまりにも一方的だったかと言うと、そう言うわけではない。 七実ちゃんも幾度とめだかちゃんに、これまで習得してきた『強(よわ)さ』をぶつけていた。 めだかちゃんの姿も同じくボロボロだった。 そうは言っても両者とも、片や一億の病魔の副作用で、片や掠め取った吸血鬼性と持ち前の(制限されているとはいえ)再生力を活かして、 何事もなかったかのように完治させるんだろうけれど。 何とも末恐ろしい話だよ、まったく。 それでも、鑢七実ちゃんは負けた。 揺るぎようのないぐらいはっきりと、負けた。 詳細に関しては彼女の名誉のためにこの場では伏せさせてもらうが、激闘の末に彼女は負けた。 負けは負け。 それまでただ一度しか知らなかった敗北を、何処のものかもよく分からない通りすがりに負けた。 夢だった普通の敗北を知って、 念願だった苦汁をなめる行為をして、 それでも彼女、七実ちゃんは泣くしかなかった。 むせび泣いた。 七花くんがそうだったように、彼女もまた、近しい者の死が、純粋に悲しかった。 好きな相手と一緒に駄目になる。 愛する人と一緒に堕落する。 気に入った者と一緒に破滅を選ぶ。 ――尽くしたい刀と、一緒に錆びていく。 これはめだかちゃんの球磨川くんに対する言のだが、結構じゃないか。 七実ちゃんは、球磨川くんの真っ二つにされた遺体に近寄って、 今か今かと還ってくるのを待っている――それは無駄だと分かっていながら。 第一、長く無人島生活をし、人慣れをしない――ロクな人間関係を作れなかった経緯(よわさ)をもつ七実ちゃんに対して、 人の弱さにつけこんで、螺子込んで、人心掌握をしてしまう球磨川くんのような人間に、人間未満に出遭ってしまっては、 こうなる結果も見えていようというのに。 と。 何やら七実ちゃんはひとりごちる。 違うなあ。 亡霊――四季崎記紀くんと対話をしているようだ。 「――弱さを、受け入れる」 生憎幽霊の声をなんのスキルもなしに聞くのは、流石の僕でも厳しいところがある。 だから、使わしてもらうとするぜ。 ――そうだ――弱さを受け入れる―― 「……」 そういえば彼女は一度江迎ちゃんに会っているそうだが、 しかしその際、彼女は『荒廃した腐花(ラフラフレシア)』を習得することはなかった。 彼女はそれを、真似できないと判断した。 自らを制御するのに、負なるものは必要ないと判断した。 だがそれは、厳密に言うと違う。 彼女は真似できなかったのではない――真似をしなかった。 過負荷を習得することで、彼女の目指す『普通の生』は成しえないし、弱さを自らの長生きに繋げることはできないと考えた。 だから敢えて見なかった――江迎が施した目隠し、 つまりはドーム状に組み立てられた『柵(しがらみ)』を、彼女が立ち去るまで、かき消さなかった。 一度見れば大体は、二度見れば盤石に習得してします――だからこそ、一度だけで、七実ちゃんは済まそうとしたんだろうね。 僕から見たら、そう『見える』。 ――球磨川の野郎も言っていただろう―― そう言えば、言っていたね。 こう。 相変わらず括弧つけた喋り方で。 『大事なのは強がることじゃないんだぜ。弱さを受け入れることさ』 『不条理を』 『理不尽を』 『堕落を』 『混雑を』 『冤罪を』 『流れ弾を』 『見苦しさを』 『みっともなさを』 『嫉妬を』 『格差を』 『裏切りを』 『虐待を』 『嘘泣きを』 『言い訳を』 『偽善を』 『偽悪を』 『風評を』 『密告を』 『巻き添えを』 『二次災害を』 『いかがわしさを』 『インチキを』 『不幸せを』 『不都合を』 『愛しい恋人のように受け入れることだ。』 ――受け入れて――錆ついて――なにが悪い―― 「………………」 七実ちゃんは、沈黙している。 考え込んでいる。 それは一本の錆びた刀として――過負荷の一人として ――固よりおれの完了形変態刀は最後の最期まで『錆』にしようか迷ってたんだ―― 「………………」 ――腐って――錆びて――あいつに勝てよ――おれの娘――鑢七実―― そこで。 七実ちゃんは立ち上がった。 その様は死人のようだ。 ――死人と言うより、死体。 死体と言うより、物体のようだ。 人と言う気がしない。 虚ろにして、儚げ。 そんな僕の感じる彼女の雰囲気に、新たな項目が加わった。 そうだ。 これは。 これは球磨川くんたち、過負荷の―――― 「受け入れて――錆ついて――なにが悪い――いえ、いいじゃないですか、それもまた」 七実ちゃんは。 零す。 過負荷として。 虚ろな刀の流れ――虚刀流としてではなく。 虚ろな構築の流れ――虚構流として。 虚刀『錆』として――正真正銘、弱さを受け入れて。 「おーるふぃくしょん――球磨川禊さんの死を、なかったことにした」 【球磨川禊@めだかボックス 復活】 ■ ■ ■ 「禊さん。起きてもらって早々で悪いのですが――いいのですが」 「一つ言わせてもらわなければなりません」 「わたしはあなたに惚れることにしました」 「あなたの刀として、あなたの傍においてください」 ■ ■ ■ 「うん、任された。そういうことなら、僕も格好つけずには、括弧付けずにはいられないね。 生き返らせてくれてありがとう――七実ちゃん。めだかちゃんに勝つことを僕はまだ、諦めない」 ■ ■ ■ 『また勝てなかった』 「――でも次は、勝つ」 【一日目/夜/E-6 ランドセルランド】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]精神的疲労(中) [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) 、錠開け道具@戯言シリーズ、 タオル大量、飲料水やジュース大量、冷却ジェルシート余り、携帯電話@現実、解熱剤、車 [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 1:ランドセルランドで玖渚と合流。 2:掲示板を確認してツナギちゃんからの情報を書き込みたいけど今できるかな。 3:不知火理事長と接触する為に情報を集める。 4:危険地域付近には出来るだけ近付かない。 [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です ※携帯電話から掲示板にアクセスできることを知りましたが、まだ見てはいません ※携帯電話のアドレス帳には零崎人識、ツナギ、玖渚友のものが登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※八九寺真宵の記憶を消すかどうかの議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]ロワ中の記憶消失 [装備]人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス [道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語 [思考] 基本:? ? ? [備考] ※傾物語終了後からの参戦です ※本当に迷い牛の特性が表れてるかはお任せします 【羽川翼@物語シリーズ】 [状態]健康、ノーマル羽川、混乱 [装備]パーカー@めだかボックス、ジーンズ@めだかボックス [道具]支給品一式×2(食料は一人分)、携帯食料(4本入り×4箱)、毒刀・鍍@刀語、タブレット型端末@めだかボックス、黒い箱@不明、トランシーバー@現実、 真庭忍軍の装束@刀語、「ブラウニングM2マシンガン×2@めだかボックス、マシンガンの弾丸@めだかボックス」 [思考] 基本:? ? ? 0:ランドセルランドへ。黒神めだかと話せるのなら話したい。 1:阿良々木くんが死んでいるなんて…… 2:情報を集めたい。 3:戦場ヶ原さん髪もそうだけど……いつもと違う? 4:真宵ちゃんの様子もおかしい。 5:どうして私がこんな物騒なものを。 [備考] ※ブラック羽川が解除されました ※化物語本編のつばさキャット内のどこかからの参戦です ※全身も道具も全て海水に浸かりましたが、水分はすべて乾きました ※トランシーバーの相手は玖渚友ですが、使い方がわからない可能性があります。また、相手が玖渚友だということを知りません ※ブラック羽川でいた間の記憶は失われています ※黒神めだかの扱いについてどう説得したか、他の議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【一日目/夜/E-5】 【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】 [状態]健康、強い罪悪感、しかし確かにある高揚感、気絶中 [装備] [道具]支給品一式×2、携帯電話@現実、文房具、包丁、 炸裂弾「灰かぶり(シンデレラ)」×5@めだかボックス、賊刀・鎧@刀語、斬刀・鈍@刀語、お菓子多数 [思考] 基本:優勝する、願いが叶わないならこんなことを考えた主催を殺して自分も死ぬ。 1:阿良々木君の仇を取るまでは優勝狙いと悟られないようにする。 2:黒神めだかは自分が絶対に殺す。 3:掲示板はこまめに覗いておきましょう。 4:羽川さんがどうしてここにいるのかしら……? [備考] ※つばさキャット終了後からの参戦です ※名簿にある程度の疑問を抱いています ※善吉を殺した罪悪感を元に、優勝への思いをより強くしています ※髪を切りました。偽物語以降の髪型になっています ※携帯電話の電話帳には零崎人識、戯言遣い、ツナギ、玖渚友が登録されています。 また、登録はしていませんが供犠創貴、貝木泥舟の電話番号を入手しました。 ※黒神めだかの扱いについてどう説得されたか、他の議論以外に何を話したのかは後続の書き手にお任せします 【零崎人識@人間シリーズ】 [状態]健康、戦場ヶ原ひたぎを背負っている [装備]小柄な日本刀 、携帯電話@現実 [道具]支給品一式×6(内一つの食糧である乾パンを少し消費、一つの食糧はカップラーメン一箱12個入り、名簿のみ5枚)、 医療用の糸@現実、千刀・ツルギ×2@刀語、 手榴弾×1@人間シリーズ、青酸カリ@現実、 S W M29(6/6)@めだかボックス、大型ハンマー@めだかボックス、グリフォン・ハードカスタム@戯言シリーズ、デスサイズ@戯言シリーズ、彫刻刀@物語シリーズ [思考] 基本:戯言遣いと合流する。 0:一先ずこいつ(戦場ヶ原ひたぎ)をどうにかしてーな 1:戦場ヶ原ひたぎ達と行動。ひたぎは危なっかしいので色んな意味で注意。 2:伊織ちゃんと連絡を取る。合流するかどうかは後から決める。 3:真庭蝙蝠、水倉りすか、供犠創貴、宇練銀閣を捕まえる。 4:哀川潤が放送で呼ばれたし殺人をしないつもりはない? [備考] ※曲絃糸の射程距離は2mです ※曲絃糸に殺傷能力はありません。拘束できる程度です ※りすかが曲識を殺したと考えています ※Bー6で発生した山火事を目撃しました ※携帯電話の電話帳には戯言遣い、ツナギ、戦場ヶ原ひたぎ、無桐伊織が登録されています ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました ※球磨川禊が気絶している間、鑢七実と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします 【一日目/夜/E-5】 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ』 [装備]『七実ちゃんはああいったから、虚刀『錆』を持っているよ』 [道具]『支給品一式が2つ分とエプロン@めだかボックスがあるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 基本:「黒神めだかに勝つ」 今度こそ僕は、勝つ。 黒神めだかに、僕は勝つ。 ――七実ちゃんもその気みたいだしさ [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります 存在、能力をなかった事には出来ない 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用可能) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします ※始まりの過負荷を返してもらっています ※首輪は外れています 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(小)、交霊術発動中 [装備]四季崎記紀の残留思念×1 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、球磨川の首輪×1 [思考] 基本:弟である鑢七花を探すついでに、強さと弱さについて考える。 1:七花以外は、殺しておく。 2:球磨川禊の刀として生きる。 [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました ※弱さを見取れます。 ※大嘘憑きの使用回数制限は後続に任せます。 ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません ※球磨川禊が気絶している間、零崎人識と何を話していたのかは後続の書き手にお任せします ※黒神めだかの戦いの詳細は後続にお任せします。 【1日目/夜/E-5】 【黒神めだか@めだかボックス】 [状態]『不死身性(弱体化)』 [装備]『庶務』の腕章@めだかボックス、箱庭学園女子制服@めだかボックス、王刀・鋸@刀語 [道具]支給品一式、否定姫の鉄扇@刀語、A4ルーズリーフ×38枚、箱庭学園パンフレット@オリジナル [思考] 基本:もう、狂わない 1:戦場ヶ原ひたぎ上級生と再会し、更生させる 2:話しても通じそうにない相手は動けない状態になってもらい、バトルロワイアルを止めることを優先 3:哀しむのは後。まずはこの殺し合いを終わらせる 4:再び供犠創貴と会ったら支給品を返す 5:零崎一賊を警戒 6:行橋未造を探す [備考] ※参戦時期は、少なくとも善吉が『敵』である間からです。 ※『完成』については制限が付いています。程度については後続の書き手さんにお任せします。 ※『不死身性』は結構弱体化しました。(少なくとも、左右田右衛門左衛門から受けた攻撃に耐えられない程度には) ただあくまで不死身性での回復であり、素で骨折が九十秒前後で回復することはありません、少し強い一般人レベルです ※都城王土の『人心支配』は使えるようです。 ※宗像形の暗器は不明です。 ※黒神くじらの『凍る火柱』は、『炎や氷』が具現化しない程度には使えるようです。 ※『五本の病爪』は症状と時間が反比例しています(詳細は後続の書き手さんにお任せします)。 また、『五本の病爪』の制限についてめだかは気付いていません。 ※軽傷ならば『五本の病爪』で治せるようです。 ※左右田右衛門左衛門と戦場ヶ原ひたぎに繋がりがあると信じました ※供犠創貴とかなり詳しく情報交換をしましたが蝙蝠や魔法については全て聞いていません ※『大嘘憑き』は使えません ※鑢七実との戦いの詳細は後続にお任せします。 ※首輪が外れています。 働物語 時系列順 不死鳥(腐屍鳥) 第三回放送 投下順 働物語 君の知らない物語(前編) 戯言遣い 残り風 君の知らない物語(前編) 零崎人識 冠善跳悪 君の知らない物語(前編) 鑢七実 Velonica 君の知らない物語(前編) 戦場ヶ原ひたぎ 冠善跳悪 君の知らない物語(前編) 羽川翼 残り風 君の知らない物語(前編) 八九寺真宵 残り風 「意外と楽でいいが」 黒神めだか Velonica 君の知らない物語(前編) 球磨川禊 Velonica
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帰り道――――120%悪巧みで書かれた小説です―――― ◆xR8DbSLW.w ◎ ◎ ◎ 「過負荷って何だと思う」 「知りません、過剰な不可思議の略なんじゃないですか。 身近に一人は欲しいですけれど、そんな満足いくような人は中々いませんし。 右往左往するのも納得かもしれませんね。よっぽど大変なのでしょう」 「求めているんじゃなくて、見下したいだけなんじゃないの。だからみんな大変なんだよ。 案外みんなは自分に醜いところはないと思い込んでるし、いや思い込みたいのからかな。自分より下に人がいると、安心するからね」 「あなたは、どうなんですか?」 「ぼくは普通になりたいよ」 「よくそんなへらへらと言えるものですね」 「きみはどうなの?」 「わたしは既に手遅れですよ。何に関してもです」 「そりゃあよかったね――――いや、悪かったのかな」 「ですかね」 ◎ ◎ ◎ なぜこうなった、と訊かれたらぼくが聞きたいと疑問を疑問で返す真似をするだろう。 なんでこんな真宵ちゃんは溌剌としているんだろう、とは心の中では思うけれど、やはり無茶をしているとは傍目から直ぐに分かる訳で。 けれどぼくがなにも言えないのは、真宵ちゃんが、いい意味で暦くんのことを吹っ切れた。 いや、多少なりともまだわだかまりはあるだろう、けれどそれを感じさせないほど、元気でいてくれている。 それが例え無茶でも、もしくは苦茶でも、二つ合わさって無茶苦茶でも。 いい切っ掛けだと信じて。ぼくは放置している。 「ていうわけで、コミカルにいきましょう、コミカルに。暗いのばかりでは疲れます」 「うん、そうだね。時たまには空気を読まず笑い飛ばすのもいいかもしれないね」 まあそんなかんじで、真宵ちゃんが笑いながら、 笑みを浮かべ――――貼り付けながら、喋りかけてくる。ぼくはわざわざその不自然さを指摘したりはしなかった。 「ええ、これぞコミカライズですね」 漫画化されていた。 ちなみにコミカライズにそんな意味はない。 「なんです、戯言さん。その『ぼくが本来は大先輩でアニメ化されるならぼくの方をやってほしいと願いながらも、 まさかの後輩の方に先を越されてやるせなさに暮れている中、それをさせる張本人が目の前にいてどうしようもない憤りを感じる』みたいな顔をなさって」 「十割捏造の嘘ていうのも中々珍しいよね」 漫画化の次はアニメ化だった。 「ま、それはそうとで」と、真宵ちゃんは続け、 どうやら話の続きをするよう。 今現在ぼくらは、互いの情報交換をしている最中である。 真宵ちゃんから話を初めて、放送のこと、死亡者のこと、ツナギちゃんのこと、さっきの大男――――日之影空洞と言う人のこと。 全てがつながった。なにか小規模なパズルを完成させた、そんな感覚。 で、今度はぼくが話をし始め、安心院さんのこととかを話したところで、次の言葉に行く。 「なるほど、つまりは戯言さんは、僕と契約して『主人公』になってよ! と……なんでしたっけ、そう、安心院さんと言う人に言われたんですね」 「……? まあ大体そんな感じだね。それはそうとなんかすごい似ていたね。いまの契約して云々のところ。もしかして声真似得意なの?」 「ええ、わたしはよく加藤英美里さんみたいな声だと近所から評判ですからね」 「やけに具体的だな」 「きっと戦場ヶ原さん辺りは、『その必要はないわ』とか阿良々木火憐さんていう人はきっと『あたしって、ほんとバカ』とか言ってるんですよきっと」 「ぼくはその人たちを知らないし、その人たちの正体が何であるか分かんないけれど、具体的すぎるだろ、って言うツッコミはできるからね」 「それはそうとじゃれごとさん」 「割とシンプルな噛み方だけど、ぼくの呼称は戯言で一貫してくれ」 「失礼噛みました」 まあ一回の失敗を咎めるほどぼくも人間小さくない。 ここはスルーの方向に行こうと思う。よかったね、真宵ちゃん。ぼくが大きな人間で。 「あれ、不思議と戯言さんが自分を棚に上げているような」 「おいおいおい、あらぬ理不尽な申しつけでぼくを陥れようとしないでよ。やだなあ」 「…………そう、ですか」 言い切ったぼく。 そう、後ろめたいことなんて何一つない。 戯言も程々にしてほしいよね、まったく。 「まあともあれです、戯言さん」 「ん?」 「主人公なんていうものは本来誰かがなりたくてなれるようなものじゃないんですよ」 「だろうね、ぼくもそう思う」 「つまるところ、主人公なんてものは宿命なんです。 足掻こうだなんて、それは神を冒涜するかのような行為なんですよ。 そう、言うなれば千石さんにマリオがクリボーにするかような踏みつけをするみたいな、そんな冒涜です」 わたし的には千石さんはこれから何かしでかすとみています、とのこと。 …………誰だよ、千石って。 「まあ努力云々だとかでどうこうできるものではないってことですね。 けれども、それを人為的に行おうとしている安心院さんとやらは、正直言って夢見がちな中学生的思考の持ち主で無い限り。 そんな人が本当にいれば大変危険な事態ですよ、戯言さん。理解しているだろうとは思いますが」 「……まあね」 「そしてそれを真に受けるような人も相当かと思いますが」 「……同感だね、きっとそんな言葉を真に受ける人はそうとうなキチガイに違いない。 けれどぼくはあの人の言葉には、不思議とそれすらも可能にさせる。そんな魔力っつーか魅力があると感じたからね」 もしくはぼくが無力なだけかもしれないけれど。 「ともあれ、余計な伏線はこれからのストーリー展開に支障をきたしますからね。気を付けてくださいよ」 「ダメだしっ!?」 まさかのぼくの完全なる巻き添え! 十割方安心院さんが悪いのに!? 訴訟したら今ぼくは勝てる! 「まったく、わたしという逸材を有しているんですから少しぐらい上手く事を運んでほしいです」 「さっきまで泣いていた人間の言葉じゃないよね! それ」 なんかオーバーヒートしてるけど。 大丈夫か。この子。 色々、背負いこみ過ぎてないといいけれど。 目的を追いかけ過ぎて自分に余計な負荷を与えてなければいいんだけどね。 「まったく、わたしは今度は戯言ハーレムいりですか。やれやれ、人気者はつらいものです」 「待て。なんだその不可解な悪趣味グループは。ぼくはそんなものを組織しちゃいないよ」 「初期メンバーの鳳凰さんは退会してしまいましたからね……。後継ぎを探すのは一苦労でしょう」 「鳳凰とやらはきみの夢の中の話であるし、そもそもあんな一瞬出会っただけの人を一々入れるな! 後継ぎ探すのは簡単すぎて逆に苦労するよ!」 「『あんな一瞬』……ですか。まるでわたしの夢の中をのぞいたかのような言い分ですね」 ……げ。 ……まあ正直言っちゃえば、暦くんの死を乗り越えれた彼女のこと。 今更あの時のことを言っても動揺はしないんだろうけど、それこそ今さらだし。 隠していたこと、っていうのがまあなんていうか釈明がめんどいし、隠したままにしておくか。 「実を言うとね真宵ちゃん…………ぼくは超能力者なんだよ」 …………。 はっきりいって反吐が出そうになった。 何が悲しくてあの島にいた、占い師とおなじ役柄に就かなければならないのか。 不条理だ。……戯言か。 「な、なんですって……っ。ならわたしたちの出会いは……」 なぜか真宵ちゃんは乗ってきた。 ノリノリだ。 まあ話を逸らす上では都合がよかったので特別何を言うわけでもない。 ぼくも話に乗っておく。 「ああ、実を言うと仕組まれたものでね。ぼくたちがこうして話すであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「地味にむかつきますね、その語尾」 「そうなるであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」 「なんかやめてください! 気持ち悪いです」 ずいぶんな言い草だった。 本人や巫女子ちゃんあたりに謝ってほしい。 「死にたい気分ダ」 「一つのツッコミがまさかの展開に!?」 「例え相手が幽霊であろうとも、ぼくの称号は戯言使い。ぼくの前では悪魔だって全席指定、 正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」 「全面対決ですか!?」 「さあ、十全だから行くよ、お友達(ディアフレンド)。 あなたも戦う覚悟を決めたのなら、防御だの守備だの、そういう甘ったれた言葉を安易に使うのはやめたら。みっともないよ」 「わたしはそんな物理的な意味では戦いをする気はさらさらありません!」 「はぁん? 何でこのぼくがきみの命令に従事しなくちゃなんねーの?」 「ただの横暴ですよ! ていうかいよいよわたしにパクリキャラとか言えなくなってきてますよ!」 「パクリじゃないよ、オマージュだ」 「……くぅ」 あ、折れた。 まさかの展開である。 「そういえば、わたしもパクリキャラを目指そうだとかそんな設定を付け加えられてましたね」 「そうだったね、そういえば。キャラの薄い真宵ちゃん」 「……墓穴を掘りました」 しかし今思えばなんかこれも伏線に見えてくるよな。 なんていうか主人公にはキャラの濃さは付き物だし、同時に主人公と同行する人たち。 いわばパーティメンバーもキャラが濃くなきゃ面白くないからね。 「で、結局どうなりそうなの? 真宵ちゃんのキャラは」 「ふっ、戯言さん。やはりわたし思うのですよ。わたしはこのままのキャラでいようと」 「へえ」 「ですから戯言さん。わたしは貫き通す勇気をもって、これから過ごしていこうかと思っているんです」 「そりゃ御立派だね。ぼくには到底まねできない」 「まあ勇気という言葉を加味することで前向きに誤魔化しているだけで、本当はただの意地っ張りなんですけどね!」 「……」 せっかくいい言葉言ったと思ったら、ぶっちゃけやがった。 「勇気と言う言葉を最後に付ければ大抵の日本語はポジティブに置換できますよ」 「んな馬鹿な事言わないでよ。そんなわけないだろ。日本語はそんな単純なものじゃねーよ」 「……やってみますか?」 「やってみせてよ、きみの惨敗は目に見えているけどね。 そうだな、どっちかが負けたら、お互い知られたくない秘密でもバラそうか」 「秘密の暴露ですか」 「うん、結果的にどんな謝罪なんかよりも一番効率的だと思うからね。 相手の弱みを握るということは。そこから相手を一生脅し続けるのは最高だよ」 ほら。 こんな格好よく言っても言ってることがダメなら格好良くならない。 これが日本語だよ、真宵ちゃん。 「ふふ、その勝負なら……あの時みたいには、なりそうにないですね。いいでしょう、受けて立ちます」 「その無駄な度胸だけは認めるよ」 「飛んで火にいる冬の虫とはあなたのことです、戯言さん」 「なんか入る前からぼく死にかけだよね!? それ!」 「では」 こほん、と咳払いする真宵ちゃん。演出過剰だ。 「まずは小手調べから行きましょう。恋人に嘘を吐く勇気」 「お」 やるね。 やってることは普通に恋人に嘘を吐いているだけなのに、 後ろに勇気と付けるだけで、まるでそれが優しい嘘であるかのようだ――――。 そんなこと一言も言っていないのに。 「仲間を裏切る勇気」 「むむ」 わーお。 結果としては仲間を裏切っただけなのに、まるでそうすることで、 仲間を助けたような行動をとった印象が残る。 ――――そんなことは、一言も言ってないのにね。 「加害者になる勇気」 「お、おお……」 唸らざるを得ない。 ただ単に人に迷惑をかけているだけなのに。 まるで自分から汚れ役を買って出たような男の中の男を見せつけられた気分になる。 ――――そんなことは一言も言ってないのに。 「痴漢をする勇気」 「く……くそ」 完璧に劣勢じゃないか。 痴漢という卑劣極まりない(ちなみにぼくが崩子ちゃんを抱き枕……もとい奴隷……もとい「ともだち」にしているのはこれに含まれない) 犯罪を犯しているのにも関わらずに、まるで別の目的があって、その確固たる目的のためにやむなく冤罪を被ってあげましたよ的なものを感じる。 ――――やっぱそんな事は一言も言ってないのに。 「怠惰に暮らす勇気」 「こ、これは……」 最早後がない。 何もしてなく無駄に時間を浪費しているだけのはずなのに。 わざわざあえてその境遇に身を置き、大義のため、貧窮にあえいでいるかのようでさえあった。 ――――そんな事は一言も、本当に一言も言っていないのに! 「負けを認める勇気」 「…………ま、負けを」 と。 言いかけてぼくは止まる。 い、いや待ってよ。 この戯言遣い、精々が小学生に口喧嘩に負けるのか……? お、落ち着くんだ、ぼく。 なにかあるはずだ、なにか……。 「――――認めない」 「ほう」 自分でもそれこそたかだか小学生相手になにをムキになってんだとも思いつつ、 自分のターンへと、強引にもってった。 「じゃあぼくもちょっとはその勇気シリーズに便乗して、言ってみてもいいかな」 「ええ、どうぞお好きに。どうせ戯言さんの負けは目に見えていますけどね!」 では、とぼくも同じく咳払いをして、演出過剰に語り始める。 「一日一時間殺戮を犯す勇気」 「……はい?」 一見、殺戮を犯す上でもなにかしょうがない理由があって、殺戮をしているかのように見える。 しかし一日一時間と言う無駄に謙虚な言葉を付属させることで、その意識を薄めることが出来る。 結果的に涙ながらに、一時間だけ殺戮を犯す光景も浮かぶけれど、本当はもっと殺戮を犯したいけれどしょうがなしに一時間に抑制している。 そんな光景も同時に再生することが出来たりする。 真宵ちゃんも同じ考えに至ったのか、ガクガクと震え始めていた。 「勇気を出す勇気」 「な、なんですか……それ」 もはやこれは卵が先か鶏が先か、的なやつである。 勇気を出すのに勇気が必要であるが、その勇気がない。その勇気を生み出すためには、勇気が必要な訳で。 これは実を言うと、根暗な子を想像させる。 そう、活発な子ではありえない悩みな訳で、どう足掻いてもこれはネガティブなのだ。 たとえば一世一代の告白のをするためにこれが必要なのかもしれない。 けれど最終的に必要なのは、勇気ではなく勢いだ。 故にぼくはこれはポジティブにはならず、ネガティブになるんじゃないかと講じる。 そしてぼくは静かに言う。 「――――負けを、認める勇気」 「…………ま、負けを認めます」 実際には、負けを認めただけであり。 実際にやられると、それはどんな幻覚もなく、ただただ敗者の姿が在るだけであった。……何か悲しい。 ちなみに、真宵ちゃんは、「ああ! 言葉の格好よさにつられて言ってしまいました! 実際はただ負けを認めただけです! 日本語って難しいですね!」と、 両肘両膝と、両掌を地へと付け、頭を振り乱しながら喚いていた。 「う、うう……。まさか自分の技に溺れて逆に傷を負うなんて……」 「まあ別に秘密は今は暴露しなくていいよ。聞いてよさそうなことなんてないだろうからね」 「う、うう…………」 何ていいながらも、立ち直り始めたのか。 うろめきながらも徐々に足元をしっかりとさせてゆく。 …………そんなに負けたことショックだったのかな。 「ま、まあそれはともかくとしてですね、洒落事さん」 「なんとなくオシャレなイメージがあって、ぼくとしてもまんざらではないんだけど、 やはりその辺りはしっかりして欲しいからね。ぼくの呼称は戯言さんに一貫して」 「失礼噛みました」 「違う、わざとだ」 「噛みまみた」 「わざとじゃない!?」 「神マミった」 「神様殺しちゃダメだよ。ていうかまさかの振り出しに戻った!」 もしかしてぼくは、彼女の手のひらに踊らされていたとでもいうのか。 なんということだ。 これで某アニメのキャラ。赤い子以外全員出てるじゃないか。――――赤い子、ねえ。 「話を戻しますよ、戯言さん」 「あ、ああ、うん」 戻された。 「ともあれ、『主人公』なんてものは、目指してなれるものではありません」 「…………」 「わたしは、そう思いますよ」 「……うん、ぼくも、そう思うよ」 正直、正義の味方になることはできても、それはイコールして主人公につながる、というのは違うのだ。 最近では、ダークヒーローなんていうものも流行っている。 暑苦しい正義が必ずしも『主人公』なんていうことでも、やっぱりないのだ。 そんな風に思っていると、彼女。 八九寺真宵ちゃんは言葉を、繋いだ。 「ですが、それでも、わたしは戯言さんを応援してみようかと思います」 「…………」 「わたしだって最低限の観察眼ぐらいありますからね、今までの触れ合いを見て、不思議とそんな風に感じます」 「……そう」 ぼくは素っ気なく返す。 けれどその言葉は、確かにぼくの胸に届いて、温かかった。 「別にそれこそ戯言ハーレムではありませんが、わたしは、あなたを信じてみたいと思います」 「……ぼくは戯言遣いだよ。きみに接してきた全てが、戯言塗れの大嘘なのかもしれない」 「それでも、ですよ。あなたの主人公の物語であれば、それはきっとハッピーエンドで、終わるんですよ。そう、思います」 …………。 この子は、強かった。 ぼくが見届けることもなく、単純に、強かった。 大切な人が死んだというのに、それでも、強く生きている。 凄いことなんだと思う。 凄まじいことなんだと思う。 ……無理をしている感が、正直否めないけど。 それでも、健気に生きている。前に進んでいる。 この子は、凄かった。 「……ま、なんであれ一人ぼっちはさみしいですからね、わたしが一緒にいてあげます」 「…………」 全員でたよ。 この子凄いや。 「……そっか、ありがと。――――時に真宵ちゃん。ねえ、ひとつお願いがあるんだけど」 「はい、なんでしょう」 「一回さ、『師匠』って呼んでみてくれない?」 「はい? え、ああはい、『師匠』?」 「うん、ありがと」 ……。 …………うん。 やっぱり違う。 姫ちゃんとは、やっぱり違う。 代理品は代理品でしかなくて。 もしかしたら見当違い甚だしくて、代理品ですらなかったのかもしれない。 けれども、今更ぼくの決意は揺るがなかった。 友は、勿論。真宵ちゃんも当然。 ぼくは、救ってみせよう、と。 故に、ぼくは歩く。 一歩、一歩、また一歩と。 さっさと、この物語の幕を閉じるべく。 加速していく物語に終止符を打つべくぼくは、歩く、歩く。 ◎ ◎ ◎ 「特別って何だと思う」 「どうでしょうね。他人と区別の略なんじゃないですか? まあ特別って言うぐらいなんだから、おなじと言うわけにはいけませんしね。 求めることも仕方のないことなのかもしれません。右往左往しすぎだとは思いますが」 「そうだね、特別な人って言うのは欲しいものなのかもね。 とはいえ互換性と唯一性は相反するものだと思ってるからね、いや思い込みたいのかな」 「あなたはどうなんです?」 「ぼくは別に」 「さいですか」 「きみはどうなんだい?」 「さあ、そんなのはわたしの決めることではありませんよ。 他人の評価は他人が決めるものですし、同じくわたしの評価は他人が決めることですからね」 「そりゃそうだ」 ◎ ◎ ◎ 戯言遣いこと、戯言さんがわたしの前を歩く。 その背中は大きくて、まあ成人男性としてみれば少し小さめなのかもしれませんが、 阿良々木さんに見慣れていると、とても、とても大きな姿に見えてしまいます。 そう、今わたしの隣にいるのは、戯言さん。 最初は、なんだこの人、と本能的に、身体の奥底から湧いて出るような、そんな衝動な気がします。 けれど、今は、隣にいる。一緒にいてくれている。 実際、なんだかんだで察する能力は高そうな戯言さんのこと。 きっと、わたしが無理して元気を出していることぐらいは、察しているんでしょう。 それでも黙っていてくれている。 優しさなのかなんなのか。もしかしたらわたしが高く見過ぎて気付いていないだけかもしれませんけれど。 それを含めて、戯言さんのいいところなんでしょう。 そう思います。 わたしの空元気。 ギャグをしようと、一生懸命笑おうと、心の底から楽しもうと。 まだ少々慣れないですけど、戯言さんとの会話は、面白いですし。 そう、先ほどの通り。 阿良々木さんが、綺麗に。潔く、天国に行けるように。 そりゃ、わたし以外にも心残りな方はたくさんいるでしょう。 戦場ヶ原さんだとか。羽川さんだとか、妹さんだとか。 けれども、いえ、だから。 わたしなんかに構っていないで、大事な皆さんに、すこしでも憑いてあげたら。 そう、思うんです。 わたしは元気です。 わたしは大丈夫です。 わたしは泣きません。 わたしは喚きません。 わたしは既に一人じゃありません。 わたしはもう、一人じゃない。 もう、何も怖くない――――訳では勿論ないですが。 頑張るには、たります。 傍には戯言さんも付いていてくれます。 わたしだって、もう、弱くはないんです。 だから。 言わせて下さい。 最後に一つだけ。 まだ阿良々木さんが見ているなら、わたしに一言だけ言わせてください。 そう。 最後に、わたしは、言いたいことがあるんです。 今更過ぎるかもしれませんが、だけど遅すぎることは、何の理由にもなりません。 わたしのけじめの問題だから。決着をつけたいんです。 ゆらゆらと揺れる変幻自在のアホ毛を付けた、少し伸びた黒髪の男性。 いつでもわたしの雑談につきあって、本当に楽しそうにしていてくれたあの男性の姿を――――今でもここにいるかのように、 見ることが出来る、わたしの唯一無二の親しかった、愛しかった、小さな、だけども大きな人を思い浮かべて。 「さようなら」 ――――お別れの台詞はいらない。 そうでしたね。 ……失礼、噛みました。 【一日目/午前/E-3】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、 [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達) [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ランダム支給品(4~6)、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 1:真宵ちゃんと行動 2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流 3:診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。 ※名簿、八九寺の動向について知りました(以後消してもらって構いません) ※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている) ※球磨川禊との会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。 ※何処に向かっているかは後続の書き手様方にお任せします。 ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]健康、精神疲労(中) [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本:生きて帰る 1:戯言さんと行動 [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 ※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。 ※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします 「ありがとう、ございました」 阿良々木暦さん。 あなたに遭えて、幸せでした。 泰平に向けて 時系列順 交信局(行進曲) 泰平に向けて 投下順 交信局(行進曲) この世に生きる喜び 戯言遣い 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード この世に生きる喜び 八九寺真宵 探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード
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『』 ◆mtws1YvfHQ 踏み躙られていた球磨川が小さく、動いた。 気付いたのか、安心院が跳び、教卓に座った。 それが自然であるように、更には足まで組んで。 実際座り慣れているような調子で。 「…………」 球磨川がゆっくりと起き上がる。 安心院が悠々と見ている。 何時の間に持っていたのだろう。 握られていた大螺子が一個、飛ぶ。 「…………」 しかし頭の動きだけでそれを避けた。 知っていたようにもう片手に握られていた螺子がその顔面に、螺子込まれる。 刹那、安心院は笑った。 抱き寄せるように。 優しく。 抱き抱えるように。 柔らかく。 『過身様ごっこ』『飽くまで遊び』『模範記憶』『無様な背比べ』『現実がちな少女』『無人造』『冷や水で手を焼く』『明日の敵は今日の奴隷』『豪華地獄をご招待』『失態失敗』 『時感作用』『私のかわりはいくらでも』『蹴愚政治』『名乗るほどの者ではない』『名を名乗れ』『伊達の素足もないから起こる』『脅威の胸囲』『次元喉果』『弓矢に選ばれし経験者達』『巣喰いの雨』 『人間掃除機』『魔界予告』『帰路消失』『卵々と輝く瞳』『いつまでも幸せに暮らしました』『勿体無い資質』『有限実行』『眼の届く場所』『話は聞かせてもらった』『馬鹿めそれは偽物だ』 『存亡』『有数の美意識』『手書きの架空戦記』『忘脚』『生合成無視』『殺人協賛』『舌禍は衆に敵せず』『穴崩離』『選択の夜討ち』『収監は第二の転生なり』 『確率隔離食感』『自由自罪』『頓智開闢』『歴史的かなり違い』『禁断の錬金術』『若輩者の弱点』『溺愛を込めて』『思いやりなおせ』『即視』『時系列崩壊道中膝栗毛』 『全身全霊に転移』『真実八百』『鹵獲膜』『王の座標』『成功者の後継者』『死なない遺伝子』『美調生』『行進する死体』『数値黙殺』『生まれたての宇宙』 『軽い足取り』『目障りだ』『競争排除息』『お気の無垢まま』『死者会』『故人的な意見』『起立気を付け異例』『天罰敵面』『頂点衷死』『逃げ出した人達』 『死んでなお健在』『ぼやけた実体』『掌握する巨悪』『敵衷率』『懐が深海』『不思議の国の蟻の巣』『神の視点』『驚愕私兵』『影の影響力』『防衛爪』 『命令配達人』『全血全能』『晦冥住み』『寝室胎動』『頬規制』『不老所得』『控え目に書いた勿論』『座して勝利を待つ』『吸魂植物』『ためらい傷の宮殿』 『蘇生組織』『別想地』『光ある者は光ある者を敵とする』『質問を繰り返す』『最後の最後の手段』『人間強度』『不自由な体操』『心神操失』『目一杯』『実力勝負』 軽やかに。 蹴散らした。 「 !」 「――さて。またきみの負けだ」 「………………」 「それでも立ち上がる。それでも挑む。そんなきみの決意を、本心を、教えておくれ?」 座ったまま。 安心院なじみは問い掛ける。 立ったまま。 球磨川禊は口を開く。 「あいつらに勝ちたい 格好よくなくても 強くなくても 正しくなくても 美しくなくとも 可愛げがなくとも 綺麗じゃなくとも 格好よくて 強くて正しくて 美しくて可愛くて 綺麗な連中に勝ちたい 才能に恵まれなくっても 頭が悪くても 性格が悪くても おちこぼれでも はぐれものでも 出来損ないでも 才能あふれる 頭と性格のいい 上がり調子でつるんでいる できた連中に勝ちたい 友達ができないまま 友達ができる奴に勝ちたい 努力できないまま 努力できる連中に勝ちたい 勝利できないまま 勝利できる奴に勝ちたい 不幸なままで 幸せな奴に勝ちたい 嫌われ者でも! 憎まれっ子でも! やられ役でも! 主役を張れるって証明したい!!」 そして。 そうして。 沈黙が下りる。 目を閉じていた安心院は。 ただ開き、変わらず黙って教卓から降り、球磨川は動かない。 そして一瞬の、 「ちゅ」 事だった。 重なって離れ、それでおしまい。 何事もなかったように安心院は教卓に戻り、唇に指を当てた。 「ふふふふ」 「…………」 無言で口を拭く球磨川を見て笑う。 「と言う訳で、返して上げたよ。よかったね」 「……ありがとう」 「どういたしまして。公平な僕だから、返しただけでそれ以外は何もしてないよ? 大嘘憑きも」 その言葉に動きを止め、一度強く口を拭ってから、背中を向けた。 何事もなかったように。 安心院は変わらない様子で軽く手を振る。 刹那、思い出したようにまた口を開けた。 「ところで、やっぱり彼女を蘇らせる気かい?」 その問い掛けに、一瞬の間を置いてから球磨川は頷く。 予想外の事ではなかったのだろう。 むしろ予想通りの事なのか、安心院は何度か首を縦に振る。 しかし何も言わない。 その、奇妙と言えば奇妙な対応に不審を抱いたらしい球磨川が振り返る。 際に投げ付けたネジは軽く避けられた。 「…………」 小さく舌打ちし、それを見て首を傾げた。 それだけで、今度こそ歩き始めた。 教室の扉を開く。 そのまま慣れた様子で通り抜けながら呟く。 「オールフィクション」 言い終えた時には、その姿は消えていた さて、そう言う訳で僕は蘇った。 晴れて禁断の過負荷を取り戻して。 しかもありがたいことに『大嘘憑き』はそのままだ。 予想した通り、妙な具合に改善されているらしいけど。 関係ない。 死んでも死にたくない。 だけどそれより、死んでも勝ちたい。 いや勝つ。 そのために言ったんだ。 「初めまして。欠陥製品、七実ちゃん」 少し騒がしい。 呟きながら身を起こす。 だから、死ぬ前に勝つ。 黒神めだかに勝ってみせる。 「僕が、球磨川禊です」 目を開けて、見た。 欠陥製品が吊り上げられていた。 七実ちゃんに。 「えっ」 思わぬ状況に声が漏れていた。 聞こえたのか七実ちゃんと、下ろされた、欠陥製品が僕を見る。 どう言う状況だよ。 「おはようございます、球磨川さん。丁度良い所でした……いえ、悪いのかしら?」 「………………一先ずお早う」 何か言いたそうな顔をしながら、欠陥製品は近付いて、何も言わずに僕の後ろに回った。 え、何なの。 「任せる」 「そうですね。球磨川さんならもちろんご存じでしょう」 「?」 話が見えない。 とりあえずやたら背中を押してくる欠陥製品は何なんだ。 それに七実ちゃんは何を聞きたいんだろう。 可能な限り答えるけど。 僕が聞く前に、口を開けた。 「裸エプロンってなんですか?」 「………………」 「裸は分かるのですけど、そのえぷろんと言う言葉の意味を知らないものですから。聞いた事もない言葉ですので。いっきーさんたら聞いても話を逸らすばかり。今さっき強引に聞こうと思っていた所で」 「本当に蘇りやがったんだよ。そう言う訳だ人間未満。自分で撒いた種は自分で何とかしろ」 「…………」 『僕は、知らない。よく分からなかったけどとりあえず欠陥製品の話に合わせてただけだ。だから、僕は知らない』 場が完全に沈黙しました。 あ、どうもわたし、鑢七実です。 しかし球磨川さん。 その顔で知らないはないでしょう。 何と言いますか、わたしの目がなくとも一目で嘘だと分かります。 言いたくないようならどうしましょうか。 二人同時に問い詰めればその内に吐くでしょう。 けどどちらも無駄に口は固いでしょうし。 「さて……」 と、小首を傾げます。 一先ず見ているとしましょう。 それがいいし、悪い。 表情も変えずに呆然とした様子だったいっきーさんがまず復活されました。 意外とかかりましたね。 「人間未満」 『僕は悪くない』 「違う! 大嘘憑きで車は直せるか?」 『もちろん。だけどそうしてどうするんだい? むしろ密室で逃れないぜ?』 あ、確定しました。 お二人とも、裸えぷろんなるものをご存じのようです。 まずそこから吐かせる手間が省けました。 しかしどうもお二人、気が動転しているようで。 気付いてもよさそうな失敗を、悪そうな失敗に気付く様子もなく。 一応小声ですけど聞こえてますし。 珍しい。 そんなに慌てているなんて。 背中だけは向けて、目の前で今後の相談を始めました。 隠れるゆとりすらありませんか。 「とりあえずこの場から離れる名目で車を走らせる。無駄話はなしって事を言い含めて」 『乗ってくれるかな?』 「何とかしろ。それからぼくが適当に車を走らせる」 『適当に?』 「そうだ。上手く人間失格に会えれば良し。会えなくても考える時間はある」 『よしきた。それじゃ何かの間違いで診療所に着かなければ幾らでも時間は稼げる訳だ』 「あぁ、そうなると怖いのは自分だけだ」 『……負け続けの人生だけど』 「失敗ばかりの人生だけど」 『今回ばかりは』 「勝つ」 妙に息の合った会話を終えて、お二人がわたしを見ます。 「裸えぷろんとはなんでしょう?」 試しに出鼻を挫いてみました。 口を開く前に突っ込みます。 口だけは上手いですから乗せられないようにしないと。 と言う事で。 あからさまに呻いて、狼狽える様は何と言いますか。 そんなに言いたくないのでしょうか、裸えぷろん。 ですがまあこうなれば意地でも聞かせて頂きますけど。 『はっ、羽川さんはどこか知らない? 直った車に乗せてあげないと!』 「あちらに。それと」 「おーいたい……おい、人間未満」 『なんだい欠陥製品』 目を向けず指差した先に急いで駆けたいっきーさんの足が止まりました。 横目で見て、ふと異変が目に入ります。 羽川。 まにわに風の装束を纏った、まあ装束の方はボロボロですが、白髪の女。 のはず。 だと言うのに。 何時の間にか、 『……黒髪?』 髪が全て黒に変わっています。 どう言う事でしょうか。 少なくとも殺してしばらくは白だったはず。 ちらりと視線を四季崎にやっても首を振るだけ。 四季崎は関係ないと。 早速役に立ちませんね。 「少し、失礼」 いっきーさんに退いて頂き、目をしっかりと開きます。 見る。 視る。 診る。 果たして異常はないかどうか。 見続けて理解しました。 結果は、 「…………何の変化も見当たりません」 変わらない。 単に猫のような部位が消え、髪が黒に変わっているだけで。 何も見当たらない。 むしろ良い方向に変わった位でしょうか。 ええ、悪い方向ではなく。 そのまま目をお二人にまずは。 いっきーさんは少し顔をしかめているだけですか。 それだけでも珍しい気はしますけど。 ですが球磨川さんは、 『………………』 今まで見た事もないような、険しい表情を浮かべています。 さも何かに気付いたような。 何に気付かれたんでしょうか。 「球磨川さん」 『僕は、羽川さんをただ復活させただけでそれ以上の事はしてない。したとすれば……』 目を閉じて、開いた時には元の表情に戻っていました。 ですが動揺は隠し切れていませんね。 微かですが見て取れます。 しかしこれ以上突っ込むだけ無意味でしょう。 さてならば、 「………………」 未だ寝たフリを続けている彼女はどうか。 動揺に焦りに焦燥。 状況に焦っているだけでそれ以上の何物でもない。 何に焦っているかが少々気にはなりますが。 あ、球磨川さんが蘇られた事にでしょうか。 だとしたらやはり別の原因と言う事、か。 「人間未満」 『なんだい、欠陥製品?』 「お前の大嘘憑きで元には戻せないのか?」 『無いものは無くせない。それになかった事にした事をまたなかった事には出来ない』 「本当にお前のせいじゃないのか?」 『僕は弱い者の味方だ。弱い者を更に貶めるような真似はしない。強い者は幾らでも貶めるけどね』 それだけで、二人は押し黙りました。 沈黙。 ふざけあっているお二人にしては珍しく。 言葉に不自由のない二人にしては珍しく。 完全に押し黙ってしまいました。 はぁ、とため息を溢して考えてみます。 どうも訳の分からない事態が発生してしまったようですが、考えるだけ無駄と言う物でしょう。 「……見た所、気絶しているだけです。ですから何処かで休ませれば起きるのではないですか?」 「…………そうだね」 『じゃ、車に運ぼうか。七実ちゃんは真宵ちゃんを運んでくれる?』 そう言って、格好付けた球磨川さんが羽川を持ち上げようとして潰されました。 代わりにいっきーさんが背負って運んでいきます。 それを何やら羨ましそうに見ているのは何ででしょうか。 どうでもいいけど。 どうでも悪いけど。 お二人が何処にも異常の見当たらない車に乗るのを横目に、見下ろします。 あからさまに固まりました。 気にせず小脇に抱えあげます。 「診療所までゆっくり考えるんですよ」 小声で。 呟くと体を震わせました。 思わず小さく笑いながら車に乗り込みました。 横には球磨川さんが。 羽川は助手席とやらに乗せられています。 「どうぞ」 『急ごう』 「えぇ。着いたらゆっくりお話しましょうか」 途端、体を固くした三人を尻目に。 動き始める外を眺めます。 あの橙色は見えないものかと。 思っていても残念ながら見えませんでした。 戯言さんだと思いましたか。 残念でした、八九寺ちゃんでした。 可愛い可愛い八九寺ちゃんでした。 ごめんなさい。 こんな冗談でも言わないと心臓が持ちません。 訳が分からないとはこの事です。 何なんですか一体。 何なんですか一体。 大事な事ですから何度でも言いますが何なんですか一体。 突っ込みどころが多過ぎます。 過多です。 過多過多です。 「…………はぁ」 なんてため息を吐いてるこの人。 目を閉じてても分かります。 この人、あの人を殺した人ですよね。 その人の膝枕を受けてる時点で心臓が危機的状況です。 ところがどっこいそれだけじゃありません。 『………………』 何やら視線を感じます。 多分、球磨川と言う人の物でしょう。 羨ましいですか。 そうですか。 でもあなた、頭ふっ飛んでましたよね。 見ましたからね私。 転がってる頭を見て悲鳴を上げそうになったんですから。 なのになんで生きてるんですか。 吸血鬼状態のらららぎさんでも多分死にますよ。 失礼噛みました。 よし、少し余裕が出来てきました。 餅つきましょう。 失礼かみまみた。。 とりあえず時々話題に上がっている例のオールフィクションなる物が絡んでいるんでしょう。 何かをなくせる怪異か何かでしょうか。 「…………」 と言う訳で最後に来ましたよ戯言さん。 私の。 私の記憶を消すとはどう言う事ですか。 確かにどうしようもないです。 ですが、私に黙って勝手な結論を出すのは頂けませんね。 役立たずかも知れません。 足手まといかも知れません。 それでも。 あなたと一緒にいた時間を、思いを、勝手に消されては敵いません。 だから絶対、消させはしません。 「………………」 なんて、気軽に言えたらなんていいでしょう。 言える訳が、ありません。 私が足手まといなのは事実。 それに戯言さんと関係のない部分の記憶が負荷になっているのも事実です。 悔しいですけど。 今、一考して冷静に物を考えられているように感じられるのは奇跡に近い偶然でしょう。 混乱し過ぎて一周した感じに。 その内、また、何も考えられないような状態になるかも知れない。 そうなれば私は、負担でしかない。 戯言さんにとって邪魔でしかない。 「……………………私は」 私は。 いえ。 もう少し、考えましょう。 それからでも遅くないはずです。 無意味な先伸ばしでは、ないはずですから。 だから。 だからどうか。 もう少しだけ、考えさせて。 【一日目/夕方/F-4】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、車で移動中 [装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ [道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている、水少し消費)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、 赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) 、錠開け道具@戯言シリーズ、 タオル大量、飲料水やジュース大量、冷却ジェルシート余り、携帯電話@現実 [思考] 基本:「主人公」として行動したい。 0:診療所で羽川さんを休ませる。 1:それから真宵ちゃんの記憶を消してもらう 2:掲示板を確認してツナギちゃんからの情報を書き込む 3:零崎に連絡をとり、情報を伝える 4:早く玖渚と合流する 5:不知火理事長と接触する為に情報を集める。 6:展望台付近には出来るだけ近付かない。 7:裸エプロンに関しては戯言で何とか。無理なら人間未満に押し付ける。 [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。 ※夢は徐々に忘れてゆきます。完全に忘れました ※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。 ※携帯電話から掲示板にアクセスできることを知りましたが、まだ見てはいません。 ※携帯電話のアドレス帳には零崎人識のものが登録されています(ツナギの持っていた携帯電話の番号を知りましたがまだ登録されてはいません)。 ※参加者が異なる時期から連れてこられたことに気付きました。 【八九寺真宵@物語シリーズ】 [状態]寝たふり、ストレスによる体調不良(発熱、意識混濁、体力低下)、動揺 、鑢七実から膝枕、一周回って一時的正気、車で移動中 [装備]人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス [道具]支給品一式(水少し消費)、 柔球×2@刀語 [思考] 基本:生きて帰る 1:戯言さんと行動 2:なんでこの二人が 3:記憶を消すとはどう言う事ですか 4:こっそり聞きたいけど隣に居て聞けません…… 5:頭が上手く回りません…… 6:なに、この……なに? [備考] ※傾物語終了後からの参戦です。 ※本当に迷い牛の特性が表れてるかはお任せします 【球磨川禊@めだかボックス】 [状態]『健康だよ。お腹は満腹だ。それに車で移動中さ』 [装備]『大螺子が2個あるね』 [道具]『支給品一式が2つ分とランダム支給品が3個あるよ。後は食料品がいっぱいと洗剤のボトルが何本か』 [思考] 基本:「黒神めだかに勝つ」」『あと疑似13組を作って理事長を抹殺しよう♪』 『1番は欠陥製品の返答を待つよ』 『2番はやっぱメンバー集めだよね』 『3番は七実ちゃんについていこう! 彼女は知らないことがいっぱいあるみたいだし僕がサポートしてあげないとね』 『4番は善吉ちゃんの無念をめだかちゃんにぶつけてあげよう』 『5番は宇練さんについてだけど、まあ保留かな』 『6番は裸エプロンに関しては欠陥製品に押し付けよう! それが良いよね!』 [備考] ※『大嘘憑き』に規制があります。 存在、能力をなかった事には出来ない。 自分の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り0回。もう復活は出来ません。 他人の生命にかかわる『大嘘憑き』:残り1回。 怪我を消す能力は再使用のために1時間のインターバルが必要。(現在使用不可能) 物質全般を消すための『大嘘憑き』はこれ以降の書き手さんにお任せします。 ※始まりの過負荷を返してもらっています。 ※首輪は外れています 【鑢七実@刀語】 [状態]健康、身体的疲労(中)、交霊術発動中、八九寺真宵を膝枕中、車で移動中 [装備]四季崎記紀の残留思念×1 [道具]支給品一式×2、ランダム支給品(2~6)、球磨川の首輪×1 [思考] 基本:弟である鑢七花を探すついでに、強さと弱さについて考える。 1:七花以外は、殺しておく。 2:もう面倒ですから適当に過ごしていましょう。 3:気が向いたら骨董アパートにでも。 4:途中で裸えぷろんの事でも聞きましょうか。 5:宇練さんは、次に会った時にはそれなりの対処をしましょう。 6:四季崎は本当に役に立つんでしょうか? [備考] ※支配の操想術、解放の操想術を不完全ですが見取りました。 ※真心の使った《一喰い》を不完全ですが見取りました ※宇練の「暗器術的なもの」(素早く物を取り出す技術)を不完全ですが見取りました。 ※弱さを見取れる可能性が生じています ※交霊術が発動しています。なので死体に近付くと何かしら聞けるかも知れません 【羽川翼@物語シリーズ】 [状態]健康、ノーマル羽川、車で移動中 [装備]真庭忍軍の装束@刀語 [道具]支給品一式×2(食料は一人分)、携帯食料(4本入り×4箱)、毒刀・鍍@刀語、タブレット型端末@めだかボックス、黒い箱@不明、トランシーバー@現実、「ブラウニングM2マシンガン×2@めだかボックス、マシンガンの弾丸@めだかボックス」 [思考] 基本:不明 1:不明 [備考] ※ブラック羽川が解除されました。 ※化物語本編のつばさキャット内のどこかからの参戦です。 ※全身も道具も全て海水に浸かりましたが、水分はすべて乾きました。 ※トランシーバーの相手は哀川潤ですが、使い方がわからない可能性があります。また、当然ですが相手が哀川潤だということを知りません。 ※道具のうち「」で区切られたものは現地調達品です。他に現地調達品はありませんでした。 教室らしき部屋の中。 その唯一無二の教卓の上。 「ニャオ」 と、鳥籠の中の真っ白な猫が鳴いた。 それを膝に置いた女は笑う。 「不安かい、ご主人様が?」 「ニャ」 何か不愉快に感じたのだろう。 猫は籠の隙間から、一心に女へと爪を伸ばす。 だが届かない。 近いはずの距離があたかも数千里以上あるかのように。 何れだけ腕を伸ばしても、ほんの僅かに届かない。 届きそうで届かない。 それを見て女は笑う。 「まったく――――下らねえ。誰も彼も有象無象も等しく平等なのに。何だってそんな執着するんだい? もし何だったらご主人になりそうな別の誰かくらい五万と紹介するぜ?」 「ニャオン!」 と声を張り上げなお爪で引っ掻こうとする様を見詰め、女はため息を吐いた。 「ま、これで多少動くだろうし、いいけどさ。それにそのご主人様が本当に君を必要とするなら、こんな鳥籠なんて意味ないぜ?」 「ナウ?」 「『無効脛』を適当に弄って作っただけの籠だ。設定的な話を言えば、『大嘘憑き』の効果と君の逃走の二つ防ぐ目的でした使ってない。どっちかって言うと過負荷寄りの君ならその内、抜け出せるかも知れないぜ?」 「ニャーン」 「かもだけどさ――しっかし今回の行動からして、わざわざする価値があったかどうか。良い結果になると良いなーと思ってやってるんだぜ、これでも。あ、いや違うか。こう言う時は」 猫を見る目はそのまま変わらず。 道端の石ころでも見ているように。 言った事すらもどうでもよさそうに。 何もかもどうでもよさそうに。 それでいて、 「悪い――んだったっけ? そう言えば良いか。いや、悪いか――それこそどっちも何も、変わらねえのになあ……」 悪そうに、笑った みそぎカオス 時系列順 拍手喝采歌合 「意外と楽でいいが」 投下順 きみとぼくのずれた世界 みそぎカオス 戯言遣い 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 鑢七実 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 羽川翼 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 八九寺真宵 君の知らない物語(前編) みそぎカオス 球磨川禊 君の知らない物語(前編)
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話数 題名 登場人物 作者 000 0 はじまりはじまり 不知火袴、戯言遣い、皿場工舎 ◆1aw4LHSuEI 001 「正義は必ず勝つんだぜ」 とがめ、阿良々木火憐、宗像形 ◆1aw4LHSuEI 002 自己満足だ 戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉、阿久根高貴 ◆VxAX.uhVsM 003 阿良々木暦の人間サンドバック 阿良々木暦、黒神めだか、(忍野忍) ◆1aw4LHSuEI 004 今、再び語られる物語 鑢七花、真庭鳳凰 ◆T7dkcxUtJw 005 戯言語 戯言遣い、八九寺真宵 ◆VxAX.uhVsM 006 ランドセルランドの虐殺劇 零崎軋識、真庭喰鮫 ◆H5vacvVhok 007 閃々響々 宇練銀閣、浮義待秋 ◆mtws1YvfHQ 008 球磨川禊のパーフェクトマイナス教室 串中弔士、球磨川禊 ◆VxAX.uhVsM 009 クラッシュクラシックの赤い魔法 零崎曲識、水倉りすか ◆H5vacvVhok 010 外物語 匂宮出夢、鑢七実 ◆mtws1YvfHQ 011 真庭狂犬の災難 玖渚友、西条玉藻、無桐伊織、真庭狂犬 ◆H5vacvVhok 012 異常(アブノーマル)の思考、そして考察 黒神めだか、黒神真黒 ◆VxAX.uhVsM 013 「それでは零崎を始めよう」 零崎双識、真庭蝙蝠 ◆T7dkcxUtJw 014 恋物騙 貝木泥舟、江迎怒江 ◆HC4CdzPdhs 015 全てが0になる 時宮時刻、零崎人識、櫃内様刻、病院坂黒猫、病院坂迷路 ◆H5vacvVhok 016 「いーちゃんに会いたい」 想影真心、とがめ ◆T7dkcxUtJw 017 出陣だ 羽川翼、日之影空洞 ◆VxAX.uhVsM 018 一寸先は口!? 戯言遣い、ツナギ、八九寺真宵 ◆xzYb/YHTdI 019 アヒル、赤乗せ陸に往く 哀川潤 ◆mtws1YvfHQ 020 反抗開始 供犠創貴、真庭蝙蝠、阿久根高貴 ◆xzYb/YHTdI 021 その男、取り扱い注意にして 西東天 ◆xzYb/YHTdI 022 「許せねえな」 戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉 ◆xzYb/YHTdI 023 虚数にしてやるぜ!!! 左右田右衛門左衛門、球磨川禊 ◆xzYb/YHTdI 024 虚刀流、道を決める 鑢七花 ◆VxAX.uhVsM 025 殺人鬼の邂逅 零崎軋識、阿良々木火憐、宗像形 ◆xzYb/YHTdI 026 後悔と決意 零崎双識 ◆mtws1YvfHQ 027 夢の『否定』 否定姫 ◆xzYb/YHTdI 028 破壊臣に墓石 阿久根高貴、宇練銀閣 ◆xzYb/YHTdI 029 狐の達観 西東天 ◆mtws1YvfHQ 030 混沌は始まり、困頓はお終い 想影真心、時宮時刻、零崎人識、櫃内様刻、病院坂黒猫、病院坂迷路、とがめ、(日和号) ◆mtws1YvfHQ 031 雑草とついでに花も摘む 匂宮出夢、鑢七実、貝木泥舟、江迎怒江 ◆xzYb/YHTdI 032 偶然目が合ったので 西条玉藻、貝木泥舟 ◆mtws1YvfHQ 033 +と-、二人の考え方 戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉、球磨川禊 ◆VxAX.uhVsM 034 今は不忍と未だ不完全 左右田右衛門左衛門、黒神めだか ◆mtws1YvfHQ 035 NO ONE LIVES FOREVER 零崎人識、匂宮出夢、鑢七実 ◆H5vacvVhok 036 +から堕ちた者と-に認められなかった者 串中弔士、黒神めだか ◆xzYb/YHTdI 037 スーパーマーケットの口戦 戯言遣い、ツナギ、真庭鳳凰、八九寺真宵 ◆mtws1YvfHQ 038 知られざる英雄(知られた英雄) 哀川潤、日之影空洞 ◆xzYb/YHTdI 039 堕落の果て、害悪の跡地にて 玖渚友、無桐伊織 ◆mtws1YvfHQ 040 時、虚刀、学園にて 水倉りすか、鑢七花 ◆xzYb/YHTdI 041 障り猫逆怨み 羽川翼 ◆mtws1YvfHQ 042 喫茶店でのお知らせ 串中弔士、戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉、黒神真黒 ◆xzYb/YHTdI 043 天災一過 零崎人識、零崎軋識、鑢七実 ◆mtws1YvfHQ 044 人は変わる、ただし一部を除く 貝木泥舟、江迎怒江 ◆VxAX.uhVsM 045 いのじキャット 戯言遣い、ツナギ、羽川翼、八九寺真宵 ◆xzYb/YHTdI 046 属性は「肉」、種類は「変態」 供犠創貴、真庭蝙蝠 ◆mtws1YvfHQ 047 図書館革命!? 阿良々木火憐、宗像形 ◆VxAX.uhVsM 048 冒し、侵され、犯しあう(前編)冒し、侵され、犯しあう(中編)冒し、侵され、犯しあう(後編) 西条玉藻、零崎人識、零崎双識、鑢七実、貝木泥、舟球磨川禊、江迎怒江 ◆xzYb/YHTdI 049 今まで楽しかったぜ 玖渚友、無桐伊織、櫃内様刻 ◆xzYb/YHTdI 050 悪意の裏には善意が詰まっている 否定姫 ◆VxAX.uhVsM
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その事実も今は知れず ◆VxAX.uhVsM そこは元学習塾として使われていた場所である。 叡考塾、と言った名前がつけられていた場所だ。 とはいっても学習塾だったのも今は昔のことである。 今ではボロボロ…とまでは行かないがかなり古くなってしまっている。 「しかし…こんな物を良く持ってこれたなあの爺さん…」 元英雄、日之影空洞はその塾の跡の前に立っていた。 放送前と言う事で身を隠すために施設を探していた結果、ここを見つけたのである。 「まあ、贅沢なんて言えねぇな…我慢するか」 どうせ放送が終われば離れるのである。 贅沢言って外で敵を警戒しながら聞くより中でゆっくり聞いた方がいいに決まっている。 中に入るとまず感じる古臭さ。 本気でやれば壊れてしまいそうな建物である。 まあ、そんなことはしないが。 ここはあくまで使わせてもらう場所だ。 そんな場所に対し壊すなんてことはしたくない。 まあ、あくまで個人的な考えだが。 「しかし、上の階があるのか…時間もまだ残ってるし、廃墟探索とでもしゃれこもうか」 廃墟とは言え何かあるだろう。 懐中電灯を取り出し点ける。 思った通り中も古いようだ。 所々亀裂が入っていたりしている。 「こりゃあ…予想どおりっつーか……」 机が所々に散らばったりしている。 元塾なのだからそうであってもおかしくない。 残念ながら調べても何もないので、2階に行く。 2階には、積まれた机があった。 なんというか、なんでこんな風に積まれているんだと思ってしまった。 不気味、と言うのか…訳が分からない。 他に目につく物もない。 と言うよりこんな場所に求めるだけ無駄だが。 「しかし……箱庭学園に負けず劣らずおかしい場所だよな…」 そう言いながら次は3階に昇る。 今度は普通…とは言えないが先ほどよりはおかしくない場所であった。 机の中を調べていたら、某ドーナツの箱を見つけた。 どうやらここに箱を置いたままにしていたらしい。 「……うお、なんか2個ドーナツが入ってやがる」 腐ってはいないようだが2つドーナツが入っている。 しかし食いたいかと言うとそうでもない。 いや、むしろこんなものを食いたいと言う奴がいるだろうか。 そんな奴がいたら俺の前に出てきてほしいものだ。 「……念のために持っておくか」 何に使えるか分からないが持っていく。 きっと何かに使えるだろう。 そう思うしかない。 「よし、4階…行ってみるか」 階段を昇る。 そういえば時間はどうなっているのだろうか。 ふとそう思いながら時計を見た。 5時54分…あと6分で放送が始まる。 丁度4階で捜索を終えて放送を聞けばいい。 そう思いながら、階段を上っていく。 そして、4階が見えた時。 「……ッ!おい!そこの奴!」 日之影は階段を急いで登り、倒れている男に近づく。 上半身に何も着ていないことは無視して、異常が無いか見る。 顔色がそんなに良くない、まるで…。 「何者かに力を奪われたような……か」 まず頭に浮かんだのはあの猫娘だ。 自分もやられたので頭に染み付いているだけだから、違うかもしれない。 しかし、一番可能性が高いだろう。 「……このまま放置するのもアレだな………まあ、放送聞きながらどうするか考えるか」 この時日之影は知らなかった。 この倒れている彼自身が、哀川潤に聞かされたいーたんこと『戯言遣い』なのだ。 しかし、ただどんな人間かだけ聞かされただけなので分からなかった。 この出会いは一体どんな運命に繋がるのだろうか。 【一日目/早朝/E-3 学習塾跡の廃墟4階】 【日之影空洞@めだかボックス】 [状態]体力完全回復、つまり健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り) [思考] 基本:いつも通り悪物をブッ飛ばす。 1:放送を待ちながら、こいつが目を覚ますのを待つ 2:この場にいるのなら、黒神と接触したい。 3:西に向かう [備考] ※戯言遣いをとりあえず悪者と認識しています。(会ったら再判断) 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態]健康、上半身裸、就寝中、エナジードレインによる疲労(小) [装備] [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)、お菓子多数、缶詰数個、赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ [思考] 基本:殺し合いをする気はないし、あの爺さんをどうにかする気もない。 1:……… 2:友はどうしているかな 3:翼ちゃん……まぁいいか [備考] ※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。 ※エナジードレインによる疲労は時間の経過とともに回復していきます。 悪意の裏には善意が詰まっている 時系列順 善意の裏には悪意が詰まっている ネットカフェで一服 投下順 三つのモットー 知られざる英雄(知られた英雄) 日之影空洞 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted- いのじキャット 戯言遣い この世に生きる喜び -Theory that can be substituted-
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【性別】男 【口調】一人称:僕 二人称、三人称:あんた 呼び捨て 【性格】毎期クラス委員長を務める優等生である反面、自分以外の全ての人間を見下している傾向が強い。 【能力】 「『魔法使い』使い」 本人は魔法を使うことができないが、それゆえに魔法使いであれば考えつかないような魔法の使用方法、及びその欠点を見つけ出すことができる。 【備考】1年前に不登校であったりすかの家を訪問した際に彼女が普通ではないことを直感。それ以後彼女を重要な「駒」とみなし、近しい関係を保っている。またりすか以外にもそうした「駒」は何人かいる模様。 夢は全ての人間を幸せにすることであり、そのためならばどんな犠牲も厭わない。 父親には反発している反面、敵わないと認め尊敬している。 以下、バトルロワイアルにおけるネタバレを含む +開示する [[]]の本ロワにおける動向 初登場話 [[]] 登場話数 スタンス 現在状況 現データ [[]] キャラとの関係(最新話時点) キャラ名 関係 呼び方 解説 初遭遇話 [[]]